山 行 記 録

【平成14年3月3日(日)/吾妻連峰 デコ平〜西大巓〜西吾妻〜二十日平】




ホワイトアウトのため周りはほとんど見えない西大巓山頂



【メンバー】単独
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】吾妻連峰
【山名と標高】西大巓1981m、西吾妻山2035m
【天候】曇り時々雪
【温泉】米沢市 鷹山の湯 500円
【行程と参考コースタイム】
グランデコスキー場リフト終点1000〜西大巓1145〜西吾妻小屋1230-1245〜西吾妻山1300〜二十日平〜グランデコスキー場1430〜駐車場1445

【概要】
今年の冬は思ったほどの雪も降らないままに過ぎ去り早くも3月である。今日の予報はそれほど良くないものの、意外にも朝から青空が広がり、降り注ぐ陽射しの柔らかさに春が近いことを感じさせた。

リフト終点でシールを貼り早速オオシラビソの樹林帯を登り始める。風は冷たいが気持ちの良い陽射しがあり快適なシール登高だ。騒々しいスキー場の音楽も少し登るとやがて聞こえなくなった。風の音だけの静かな山にようやくホッとする。雪質はあいにくアイスバーンのように堅く、つい先日、大沢を下ったときのパウダーがウソのようだった。やはり先日の雨と最近の好天のためだろうか。これでは下りは大変かもしれないなと思うといささかがっかりだった。

午後からは移動性高気圧に覆われるとあって期待しながら西大巓をめざした。しかし登るにつれて西の空からは薄雲が広がり始め、山頂に近づく頃にはすっかりガスに包まれてしまった。その頃5・6人のグループが南西の斜面を下ってきたが視界がないのでみんな慎重だ。ボーゲンの姿勢も腰が引けているのでおっかなびっくりといった格好で下っている。全員、縦走する予定でもいたのか大きなザックを背負っていた。

ようやく登り着いた西大巓は深いガスの中であった。山頂にはスノーボーダーが二人と単独の登山者が一人。西吾妻小屋まで行こうかどうか様子を伺っているようだった。ホワイトアウトのためにここからは計器行動で小屋に向かう。

たどりついた誰もいない西吾妻小屋ではそそくさとカップラーメンだけを食べてすぐに小屋を出た。天候がますます悪化しているのでのんびりと休憩する気分にはなれなかった。小屋を出るときにひとりの登山者に出会った。深い霧の中から急に目の前に現れたので少しびっくりした。その人は西大巓の山頂で出会った人のようで、天候が急変したので今日は無理をせずにこの西吾妻小屋に宿泊するという。視界を奪われて小屋を探すのもたいへんだったようだ。山頂にいた二人のスノーボーダーは西大巓からスキー場に引き返したらしかった。

西吾妻の山頂に向かってスキーのトレースが白い闇の中に続いていた。それは昨日のものか今日の踏跡なのかはよくわからなかった。周囲が何も見えないというのはそれだけでかなり心細いものだった。まして誰も周りにいないというのは不安がいっそう募るばかりだった。今日はいつにない緊張感に包まれている。冬山はそんなに甘くないぞと戒められている気がした。

強烈な風が吹く西吾妻山頂でシールをはずす。冷たくて手がかじかんだ。最初はガリガリの斜面なのでほとんど横滑りで下った。見えない中で樹林に激突しないように注意する。連続したターンが出来ないので一つや二つのターンで立ち止まる。そして急斜面のトラバースや横滑りなどを繰り返しながらだんだんと標高を下げた。そのうち下るに従って視界が戻ってくるので少しずつ安心感が広がっていった。そして見覚えのある平坦な斜面に差し掛かった。ようやく二十日平までおりてきたのだ。昨年はここが最後のハイライトとばかり快適にテレマークで下ったことを思い出す。ここからは2人分のトレースが続いていた。二人のトレースを見ると私はずいぶん沢よりのコースをとってきたのがわかった。コースを振り返る余裕もなかったようだ。そこからはほどなくスノーブリッジを渡ってスキー場のゲレンデに飛び出した。ふと気が付けばいつのまにか粉雪も舞い始めている。振り返ると西吾妻山も西大巓も黒々とした雲に隠れて全く見えなかった。



西吾妻山の稜線
これから晴れ上がるだろうと期待していた頃




天候の急変のため今日は西吾妻小屋に宿泊するという単独行者



西吾妻山山頂
強烈に冷たい風が吹いている


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