山 行 記 録

【平成14年2月24日(日)/吾妻連峰 天元台から大沢下り】



砂盛から栂森を仰ぐ



【メンバー】単独
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】吾妻連峰
【山名と標高】中大顛1964m、東大顛1928m
【天候】曇りのち晴れ
【温泉】米沢市 鷹山の湯 500円
【行程と参考コースタイム】
自宅700(車)米沢駅800(バス790円)天元台湯元駅着850(リフト発900)
天元台スキー場リフト終点950〜中大顛〜人形石〜東大顛〜明月荘1210-1300〜大沢駅1520着
大沢駅(車)天元台(車)米沢駅(解散)〜自宅

【概要】
今日は延長が20キロメートルにも及ぶという、吾妻連峰でもとっておきの滑降コースである大沢下りである。好天の天気予報に誘われて自宅を早朝出発し、米沢駅からはバスを利用して天元台に向かった。しかし天元台のロープウェイ湯元駅付近は冬晴れの天候だったのだが、第3リフトに乗り継いでいる途中から濃いガスの中に覆われてしまい、相変わらず山の天候はわからないものだとつくづく考えさせられた。リフトの監視所で登山計画書を書いていると、今日は大沢下りの予定で先に2名が登っていったという。

リフト終点でシールの準備をしていると、ちょうどリフトで上がってきたばかりの人に声を掛けられる。驚いたことに2週間前の吾妻でも偶然に出会った郡山の小林さん夫妻であった。偶然も重なるときは重なるものである。山スキーの世界は意外にも狭いということだろうか。その小林さんはちょっとしたアクシデントのために帰りの足がないと、予定していた大沢下りをあきらめていた様子だったが、米沢駅からは私の車で戻れるので、急遽ニワカ3人パーティを結成することになった。

中大巓までは視界のない樹林帯を登り、ピークからはシールをはずして滑り始める。しかし中大巓山頂から人形石付近も全く視界がなかった。ここからは藤十郎との鞍部までちょっとした斜面を楽しめるところだが足元が見えないのでそろそろとボーゲンなどで下る。まったく冬の天候の気まぐれには閉口するばかりだった。途中で10人前後のグループに出会う。みな視界不良のために立ち止まっては様子を伺っている。その人達はどうもガイドを伴ったスキーツアーのようだった。

藤十郎を過ぎると緩やかな登り下りが続き、やがて弥兵衛平の広い雪原に出た。この付近で天童山岳会の山スキーの二人連れと合流し、そこからは5人で相前後しながら明月荘をめざした。二人は大沢駅に車を1台留めてあるらしく、話をしているうちに大沢駅から天元台まで送ってくれるというので、我々3名はありがたく申し出を受けることになった。

移動性高気圧に覆われるという天気予報を信じて、いつ晴れるか心待ちにしていたが、雪原歩きを続けているうちにガスが徐々に切れ始め、上空には青空がのぞくようになってきていた。やはり冬山は好天に限るなあと久しぶりの日差しがうれしい。樹氷はまぶしいほどの日の光を浴びて輝いている。雲が流れるとまもなく飯豊連峰や蔵王連峰も視界に飛び込んできた。

2時間ちょっとでたどり着いた明月荘の入口は雪に埋もれており2階の冬期入口から中に入った。寒風に吹きさらされた体は予想外に冷え切っていた。温かいラーメンを食べ、食後に熱いコーヒーを飲むとそれだけで心が安らぎ豊かな気分になった。最初は5人だった小屋も途中から8人のグループも到着してきて賑やかな小屋になったが、その団体は昼食を簡単に済ませると我々よりも早く小屋を出ていった。

明月荘からは大沢駅を目指しての滑降のスタートである。雪はこのうえないパウダースノーで快適の一言だった。またたくまにクジラの大斜面を下ると先に小屋をでた8名グループと合流する。この辺まで下ると分厚い雲の中から抜け出して気持ちの良い青空が広がっていた。通称「忠ちゃん転ばし」では深雪の急斜面にみんな我先にと飛び込んでゆく。渋川を渡り、我々3人は砂盛のピークまで登ることにして再びシール登高だ。他の山スキーの人達はピークを卷きながらもやはり砂盛に向かっている。砂盛のピークは樹林帯にぽっかりと開いたところで、まるで桃源郷のような一角だった。休憩するにはこのうえない場所で、3人ともザックを下ろして小休止する。見渡せば青空を背景にして栂森が美しく時間が経つのを忘れそうであった。

ピークからは樹林帯を縫うように斜面を下った。誰もまだ滑っていない深雪は楽しく、歓喜の叫び声が思わず洩れてきそうである。途中の小尾根の急斜面では先ほどの山スキーの団体が滑っている。長い滑降コースもスキーだとあっという間だ。徐々に終点の大沢駅が近づいていた。これではあまりにもったいないと茂皮平付近で再び大休止する。明月荘を出るときには曇天だった空模様もその頃はすっかり晴れ渡っていた。燦々と降り注ぐ陽射しは3月の春山のようである。そこからは林道を絡ませながら吾妻山麓牧場まで快適に滑って行く。大沢スキー場の休憩小屋では20名前後の人達がビールを飲んだりしながらくつろいでいた。今日は地元の山岳会主催で毎年行われている、峠駅〜栂森〜大沢間のツアーが行われたようであった。

大沢駅から天元台までは予定通り天童山岳会の二人に送っていただいた。そして駐車場での別れ際、二人の名前を尋ね、何気なく差し出されたメモ用紙をみて再び驚いてしまった。ひとりは飯豊朝日連峰ではバイブルのような存在の高橋金雄さんだったのである。今日一緒に行動しながらも、どこかで会ったとこがある人ではないかと妙にすっきりしない気持ちが続いていたが、ガイドブックでは散々世話になっていながら本人と出会うのは初めてであり、こんなところで会おうとは思ってもみなかったので心底驚いてしまった。これは小林さんも同様だったらしく、振り返ると思わず冷や汗が出てきそうである。最初からわかっていればいろんな話が聞けたのにと思っても後の祭りだった。高橋さんからはメールアドレスなどを教えていただき、帰宅後にメールをすることを約束して別れた。その後小林さん達には米沢駅までは逆に送ってもらう形となり、米沢駅前の駐車場で解散する。こうして今回の大沢下りは朝から予期しなかった人達との出会いがあり、久しく心に残りそうな山行となったものである。



平坦な弥兵衛平をゆく小林さん達
(先頭の二人は高橋金雄さん達)


通称「忠ちゃん転ばし」の急斜面を滑る
(小林さんが撮影してくれました)



再びシールを貼って砂盛を登る



砂盛のピークで休憩する小林さん、石川さん



晴れ渡った茂皮平付近で大休止


inserted by FC2 system