山 行 記 録

【平成14年2月10日(日)〜11日(月)/吾妻スキー場から土湯温泉へ(テレマークスキー)】



ようやく吾妻小舎に到着する
厳しい悪天候の半日を堪え忍んだおかげで
天国のような小舎での一夜が待っていた



【メンバー】単独
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、吾妻小舎 (泊)
【山域】吾妻連峰
【山名と標高】一切経山1949m、高山1805m
【天候】(17日)晴れのち風雪、(18日)雪
【温泉】高湯温泉 花月ハイランドホテル 600円
【行程と参考コースタイム】
(10日)吾妻スキー場リフト終点1020〜五色沼1250〜吾妻小舎1435
(11日)吾妻小舎750〜鳥子平840〜高山920〜林道〜土湯温泉(不動の湯ゲート)1210着
     土湯温泉(不動の湯ゲート)(タクシー)吾妻スキー場

【概要】
(1日目)
今週は吾妻連峰、高山下りである。ちょうど1年前の同じ時期に初めてこのコースを下ったことを思い出す。昨年は悪天候の中の山行を余儀なくされた2日間だったが、このたびの連休もこの冬一番ともいえる寒気が入ってきており、海も山も大荒れの天候が予想されている。私は連休の初日から入山するつもりで吾妻スキー場まできたものの、あまりの天候の悪さに昨日は登るのを断念した。出直しとなった今日の天候は昨日よりはだいぶいいようで、北のほうを見れば青空さえ見えていた。

リフトを3本乗り継いだリフト終点で登る準備をしていると、樹林帯の入り口で出発の準備をしていたパーティのひとりから声をかけられた。驚いたことにその人は昨年の高山下りでお世話になった郡山の小林さんであった。1年振りの偶然の再会である。小林さん達は6人で今年も高山下りの予定らしかった。シールを貼り終えて樹林帯をしばらく登っていると、慶応吾妻山荘への分岐付近で一切経山を見上げながら佇んでいる登山者がおり、声をかけてみると、なんとその人はつい先日私のホームページの掲示板に書き込みをしてくれた山越さんであった。山越さんは飛騨の高山という遠方から冬山登山にやってきた人で、昨日の悪天候のなかを西吾妻に登ったというから唖然とするばかりだが、それにしても小林さんと山越さんというインターネットで知り合った人達に、こうして同じ山で偶然にも出会うのだから世間は狭いものだ。

登り始めは青空も広がり、吾妻小舎まではなんとか持ちそうだと思っていた天候も、大根森の尾根の急登を過ぎる頃からだんだんと風雪が厳しくなってきていた。そのうえ視界は悪くなる一方である。大石の稜線に出るとさらに猛烈な風が吹いており、時々体ごと吹き飛ばされそうになるほどだった。五色沼の淵まで下りてくると風はさらに激しさを増し、目出帽を被った上から帽子を二重にした。しかしそれでも強烈な風は膚に突き刺さる。この厳しいまでの寒さは久しぶりで、さながら冬山の洗礼を受けているようなものであった。

樹林帯を抜け出て一切経山の直下まで登り詰めるとシールをようやくはずすことができる。酸ガ平避難小屋まではクラストした固い斜面のために横滑りで凌いだ。浄土平のなだらかな雪原を通り抜けると小舎までは再びシールを貼る。ここまでくれば小舎まではもうまもなくだった。

吾妻小舎は不思議に気持ちをほっとさせるような、懐かしい想いを抱かせる山小屋である。小舎の中ではストーブが焚かれており、ヤッケなどを脱いで濡れたものを乾かした。そして熱いお茶をいただくとようやく気持ちが落ち着いた。悪天候の中をついての行動だったために小屋の中はさながら天国のようだった。今日の宿泊は小林さんグループが6名。横浜から3人組。それに単独行が3名で計12名である。管理人の遠藤さんから日本酒とつまみや漬け物などの差入れをいただくとみんなからは歓声が上がり、こんな天候にもかかわらず結構賑やかな山小屋になった。そして小舎のランプに火が灯されると一層冬の山小屋らしい雰囲気に包まれた。一緒に酒を飲んでいるうちに話しもはずむ。そして明日は単独行同士で一緒に高山を下ろうかということになった。好天は望めそうにないので同行者がいるのは心強いばかりである。こうして冬の山小屋でたまたま一緒になった人達との静かで温かい交流は時間の経つのを忘れさせた。その夜、就寝前に外に出てみると満天の星空が広がっていた。張りつめたような寒気の中で煌々と星が瞬き、まるで月夜のような明るさであった。

(2日目)
昨夜は目を見張るほどの星空だったにもかかわらず、翌日は朝から曇り空で時折雪が舞う天候であった。好天であれば東吾妻山を登る予定だったが結局断念することにし、小舎を出ると高山にまっすぐに向かった。最初に小林さんたちの6人組が出発してゆき、少し遅れて単独の我々も小舎を出た。鳥子平から高山まではそれほどの標高差はないものの、その登りはけっこうきつく体力不足を痛感する。高山山頂からはシールをはずしていよいよ滑降の開始だ。ここからはこのコースのハイライトでもある。昨年はほとんどホワイトアウトの状況だったために視界はほとんどなかったところだ。今日は雪が降り続いているもののうっすらと山並みも見えるので一安心である。高山の山頂からは小林さん達6人組と私達単独行3人組は合流した形になり一緒に下る。ここからは真南に進路をとり尾根伝いに滑る。最初はクラストしていた斜面も下り始めると徐々に雪面が柔らかくなり滑りやすくなった。

麦平からすこし登ってからは樹林帯を気持ちよく滑り、やがてブナ林を過ぎると尾根が急に狭くなった。ここは通称「フンドシ」と呼ばれているところで見晴らしもよく休憩するには最適なところだった。今日の長い行程もここまでくれば半分以上を下ってきたことになる。6人組も3人組もしばらくザックを下ろして行動食などを食べながら小休止した。そこからも樹林帯を快調に飛ばしながら下って行く。しかし林道に飛び出してみるとやはり堰堤工事のための除雪がされており、そこからはスキーは使えない。土湯温泉まではスキーを担がなければならなかった。土湯温泉少し手前の「不動の湯ゲート」まで林道を小1時間ほど歩き、そしてそこからはタクシーで吾妻スキー場まで戻った。

高湯温泉の露天風呂からは、下ってきたばかりの高山からの緩やかで長い稜線を見渡すことができる。しかし山頂付近はガスに覆われていてよく見えなかった。下界は温かい陽射しも差していたのだが山はまだ雪が降り続いているようであった。


一時的に晴れ間が見えた頃、一切経山(左)と家形山(右)を望む
佇んでいる登山者は偶然出会った高山市の山越さん



大石から見る氷結した五色沼と一切経山
ここからは猛烈な寒風が吹き荒れていた



一切経山と蓬莱山との鞍部付近から吾妻小富士を望む



巨大な反射板が立つ高山山頂で滑降の準備をする



通称「フンドシ」で休憩する6人グループ
今日の長い行程もここまでくれば半分以上を下ってきたことになる
ここはほっと一息出来る場所である


郡山のテレマーカー、小林さん
「フンドシ」から樹林帯に下って行く


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