山 行 記 録

【平成14年1月26日(土)/裏磐梯 雄子沢口から雄国山】



飯豊連峰をバックに
薄雲が広がり山頂には冷たい風が吹きつける
(雄国山山頂)



【メンバー】単独
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】裏磐梯
【山名と標高】雄国山 1,271.2m
【天候】晴れのち曇り
【温泉】喜多方市 「喜多の郷」500円
【行程と参考コースタイム】
雄子沢口945〜雄国山1215〜雄国沼休憩舎(昼食)1245-1330〜雄子沢口1420

【概要】
桧原湖の近くの雄国沼登山口駐車場にはまだ1台も車が留まっていなかった。当然トレースも見あたらない。快晴に近い天候なのに誰もいないとは実に不思議だったが、何年か前もこんな日があったのを思い出した。その時は一人で深いラッセルを余儀なくされて、夏道ならば雄国沼の小屋まで1時間のところをたっぷり3時間かかっていた。

準備を終え出発する頃になってから岩手ナンバーのワゴン車が1台やってきた。宮城から来た夫婦連れである。彼らの車のルーフにはスキーが載せてあるので私はてっきり山スキーだと思ったら、どうやらスノーシューを使ったスノーハイキングのようである。二人は雄国沼や雄国山は初めてらしく、ルートがわからないというので私はコースを簡単に話し先に出発した。この雄子沢口から雄国沼へのルートはテレマークスキーというよりクロカンスキーにふさわしいコースだが、雄国山山頂からの東斜面と雄国沼から下るブナ林は斜度もたいしたことはなく、手軽にテレマークスキーを楽しめるところでもある。

深雪ではまたラッセルがきついかもしれないなと少し不安を抱きながら雪道を歩き出した。しかし今日の積雪はそれほどではなく20cmほどしか沈まない。しばらく快適な雄子沢沿いの雪原歩きが続き、振り返ると自分だけのトレースがうれしかった。

1時間ほど歩いたところで右側の斜面に取り付き、沢沿いのコースから離れはじめた。ここは少し急坂でアイスバーンには新雪が張り付いており、シールで登るのは結構きつい。そしてこの急斜面は雪崩がこわい箇所でもある。太いブナ林が密集しているのでたぶん大丈夫だろうと思いながらも慎重に登っていった。

樹林帯に日の光が降り注ぐ快適な林間の登りが続いた。やがて樹林帯を登り切るとようやく雄国山の稜線が目に飛び込んでくる。薄雲が広がりだしていたものの、晴れた空を背景にして真っ白な雪をまとった雄国山の稜線がくっきりと鮮やかだった。

予定では雄国沼の小屋へ向かうつもりだったが、まだ昼前なので雄国山に直登することにしてまっすぐに登って行く。登るにつれて上空には薄雲が広がりはじめていた。そして風が強まってくると同時に先ほどまでの青空は陰をひそめてしまった。どうやら天候は下り坂に向かっているようであった。稜線に登るとさすがに風は冷たく、アウターを羽織り手袋も二重にした。そこから雄国山へはまもなくである。尾根の途上で振り返ると雄国沼休憩舎と氷結した雄国沼が見えた。しかし後ろを付いてきているはずの宮城の二人の姿はいくらたっても見えなかった。

山頂に着いてみると見晴らし台や大きな標識にはエビの尻尾がびっしりと張り付いている。陽は陰っているものの吾妻連峰や飯豊連峰は青空を背にして山並みが美しく目を見張った。どうやら磐梯山を境にして北の方は晴れているようである。あまりに寒いので山頂ではのんびりする気分にもなれず、飯豊連峰をバックに記念の写真を撮るとすぐ下ることにした。早速シールをはずすと今日はじめての滑降である。狭い尾根はクラストした雪面のためとてもターンできる状況ではないので、下り始めはボーゲンでしのぎ、雪が柔らかくなったところでターンを開始する。そしてまっすぐ小屋を目指して下っていった。

ひっそりと佇むログハウス造りの小屋には誰もいなかった。さっそくお湯を沸かしてラーメンをつくる。そして食後にコーヒーを飲むとなんとなく気分が落ち着いてきた。時折、屋根に積もった雪が大きな音を立てて落ちてくるだけで静かな山小屋だった。時々外に出てみて猫魔ヶ岳を見上げてみるもののスキー場からは誰もやってくる気配はない。そして朝方駐車場で出会った二人はいくらたってもやってはこなかった。私は氷結した雄国沼や猫魔ヶ岳の峰峰を眺めたりしながらのんびりとした時間を過ごした。窓からは春を思わせるような陽が降り注ぎ、ここでは至福ともいえる時間がゆっくりと流れていた。

ザックをまとめて外に出てみると、一時は薄雲が出て翳りはじめていた空も、いつのまにかふたたび日射しが強くなってきていた。小屋からはなだらかな斜面ひと登りすると雄国山と雄国沼も見納めである。私は樹林帯に下る前に雄国山を振り返り別れを告げた。下りはじめると木漏れ日の差し込むブナ林の滑りは実に気持ちが良く、このままずっと斜面が続いてくれたらと思いながら下った。雪が適度に深く柔らかいので快適なテレマークである。早めに雄子沢に下りしまうと、あとはなだらかな雪原を下るだけで、時々推進滑降が必要なほどだった。途中で急斜面に取り付いた地点にきてみると、スノーシューで円形に踏み固められた跡が残っている。どうやら登山口で出会った宮城の二人はここで昼食をしたものらしかった。そして踏み跡をみると彼らはここから引き返したようである。小屋まではあと1時間足らずのところまできていながら、目の前に立ちふさがる急斜面を見上げては登りを断念したのだろうか。

登りでは久しぶりの汗を拭いながら休み休みきたこのコースも、スキーを使えば下りはたちまちで、まもなく登山口が近づいていた。冬の雄国沼はいつきてもそれなりに満足感を与えてくれるから私は好きなコースである。少々の悪天候でも期待を裏切られないコースともいえるだろうか。今度この雄国沼に来るときはどのコースを楽しもうかとそんなことを考えながら、ブナ林の間をそれこそ惜しみながら下っていった。


快適な雄子沢沿いの雪原歩きが続く
振り返ると自分だけのトレースがうれしい
(歩き始めてまもなくの頃)



日の光がまぶしい樹林帯で(1)



日の光がまぶしい樹林帯で(2)



樹林帯を登り切るとようやく雄国山の稜線が見えてきた!



雄国山への途上で振り返ると、雄国沼休憩舎と氷結した雄国沼が見えた(望遠)



誰もいなかった雄国沼休憩舎


inserted by FC2 system