山 行 記 録

【平成13年9月16日(日)/那須連峰 茶臼岳と朝日岳】



雨が降り出してきた朝日岳山頂



【メンバー】2名(妻)
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】那須連峰
【山名と標高】那須岳(茶臼岳)1,915m、朝日岳1,896m
【天候】曇り
【温泉】栃木県那須町 大丸温泉630円
【行程と参考コースタイム】
自宅700==飯坂IC==(3000円)==那須IC==(有料道路360円)==那須岳ロープウェイ駐車場1000
那須岳ロープウェイ山頂駅1110〜茶臼岳(昼食)1150-1240〜峰ノ茶屋1315〜朝日岳1400〜峰ノ茶屋1445〜那須岳ロープウェイ駐車場1530

【概要】
「那須岳はその裾野によって生きている」とは深田久弥の日本百名山の中での言葉である。まあ山屋ならば誰でも知っている有名な一節といえようか。高速道路を走りながら県境が近づくにつれて那須連峰の広大な裾野が右手に見えてくると、私は自然とこの文章を思い出していた。

今日も台風や秋雨前線の影響で全国的に天候は思わしくない。福島県内を走っているときは澄んだ秋空のような空が広がっていたのに、那須ICをおりて、那須湯本温泉を過ぎる頃から薄雲が上空を覆い始めていた。さらに有料道路の料金所付近からは雲の中にすっぽりと入ったらしく、辺りは夕方のような薄暗さである。那須岳山頂付近は黒い雨雲のために全く見えなかった。

那須岳の山麓駅に到着してみると、こんな天候でも観光客は非常に多いので驚いた。何台もの大型のバスがひっきりなしに登ってくる。数カ所にある県営駐車場は既に満杯で、たくさんのマイカーが道路の片側に留めて空くのを待っていた。我々も空き待ちの車の後ろに並びながらしばらく待っていなければならなかった。

このことろ毎回展望がない山登りが続いているので、初めは今日の山登りをあきらめていた。せっかくの名山をただピークを踏むだけの山登りにはしたくはなかったのだ。しかし意外にもカミさんは暑くないのでちょうどいいからと、この悪天候を少しも気にする様子がない。私はカミさんにせっつかれながら、ひとまずロープウェイで上がるだけ上がってみようかと、山麓駅に向かった。

ロープウェイ山頂駅を降りてもやはり視界の悪さは変わりはなかった。しかし雨は降りそうもないので、ここまでくるとせっかくきたのだからと、徐々に登る意欲も湧いてきたのも事実だった。天候が悪いのにもかかわらずたくさんの観光客や登山者が茶臼岳をめざしていた。

目の前に続く登山道は茶臼岳まで伸びている。山頂までは1時間足らずで登ることができるので、少しも急ぐ必要はなく二人とものんびりムードである。砂礫地のため登りづらいので、所々で立ち止まりながらゆっくりと登った。登るにつれて岩肌が硫黄で黄色に変色しているところが目立ち始め、あたりには硫黄の臭いが立ちこめてきていた。風が強いのでそれほど心配はなさそうだが、結構強い刺激臭だった。ロープウェイを降りたときには心配していた天候も、大きな岩場を登り始める頃から時々晴れ間が見えるようになっていた。やはり山は登ってみなければわからないものだなあ、と私は予想外の好天に感謝した。

茶臼岳の山頂はたくさんの人達で喧噪を極めていた。時間はもうまもなく正午なので早速弁当を広げることにした。山頂は岩ばかりの山で大きな石がゴロゴロしており、良く見るとその大きな石の陰で風を避けながら結構多くの人達が昼飯を食べている。食事をはじめるとまもなくして再びガスが湧きはじめ、再び周囲の景色が見えなくなった。どうやら晴れても一時的なものらしく、今日はこんな天候でがまんするしかなさそうであった。

食後、茶臼岳の周回コースを経て峰ノ茶屋に向かう。やがて前方には避難小屋と剣ガ峰が迫ってきた。朝日岳へはこの剣ガ峰の東側を卷いてゆくようである。避難小屋から剣ガ峰のトラバース区間にはエゾリンドウが結構咲いていた。これまでは花がほとんど見あたらなかったので、このリンドウが咲いているだけで心が和む思いがした。

茶臼岳はロープウェイもあることからハイキング感覚でも登れるのだろうが、峰ノ茶屋から先は本格的な山道が続いた。朝日岳はガスに見え隠れしていたが、そのアルペン的な雰囲気に思わず息を呑むほどである。その姿にはさすがに那須連峰の盟主の迫力が漂っていた。途中にはクサリ場のトラバース箇所もある。左側がスッパリと切れているので細心の注意を払いながら通過した。

急坂を登ると朝日岳の肩に着いた。左の稜線は三本槍岳に続いており、右への砂礫の道をたどるとひと登りで朝日岳山頂だった。山頂では残念ながら展望はなかった。休んでいるうちに雨も落ちてきたのでザックから傘を取り出した。天候がよければ三本槍岳まで足を延ばす予定だったが、なかなかガスは晴れそうにはなく、今回はこの朝日岳から引き返すことにした。やはりいくら名山とはいえ山頂からの展望がなければ山の魅力は半減だった。

峰ノ茶屋まで戻ると相変わらず多くの登山者達が休憩している。ここは茶臼岳方面だけでなく三斗小屋温泉へのコースの分岐点にもなっているので、いわば交通の要所となっているところだ。もう時間はすでに3時近かったが、三斗小屋温泉からもまだまだ登山者が登ってくるのが見えた。私達は小屋のベンチで一休みした後、茶臼岳を卷くように東へと続いている登山道に下りていった。駐車場では今日の山をあきらめていただけに、朝日岳までも足を延ばすことが出来て、二人とも満ち足りた思いになっていた。予想外に背中も汗でびっしょりである。私達は下山後の温泉を楽しみにしながら、割合に平坦な登山道をロープウェイの駐車場を目指して下っていった。


ガスが晴れだして青空が見えた茶臼岳



茶臼岳への登り
こんな天候でもハイカーや観光客が多い




茶臼岳山頂の鳥居



峰ノ茶屋と剣ガ峰
右の朝日岳はガスに隠れて見えない



朝日岳へはガレ場の難路が続く



朝日岳への急斜面を登る



クサリ場のトラバース箇所
朝日岳からの下り



峰ノ茶屋から那須岳ロープウェイ山麓駅に向かう


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