山 行 記 録

【平成13年8月5日(日)/田子倉から浅草岳】



只見沢を隔てて圧倒的な迫力で迫る
鬼ガ面山の絶壁(剣ガ峰付近から)



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】越後山脈
【山名と標高】浅草岳1585.5m
【天候】晴れ
【温泉】只見温泉保養センター 250円
【行程と参考コースタイム】
田子倉登山口745〜剣ガ峰850〜浅草岳1000-1100〜田子倉登山口1250

【概要】
福島と新潟の県境にある名山、浅草岳。今ほど道路事情がよくなかったその昔は、会越国境の秘峰と呼ばれた山でもある。本当は残雪期に登りたい山なのだが、なかなかそうもいってはおれず、真夏の山登りとなった。浅草岳への登山口は新潟側と福島側あわせて5本あり、田子倉からはその中でも、もっとも急峻で迫力にみちた只見尾根を登るもので、浅草岳の魅力を一番味わえるコースだという。

登山口はJR只見線の田子倉駅のすぐ近くにあった。広い駐車場には何台も車が留めてあり、既にたくさんの人達が登っているようである。駐車場の一角では若者がテントを張ってのんびりとキャンプを楽しんでいる。早速、登山口で登山者カードに記入して、只見沢沿いの登山道に入って行った。緩やかな登りが続き、やがて大久保沢の水場にでた。このコース最後の水場というので、しっかりと水分を補給する。そこからは道は沢から離れ始め、急な尾根の登りとなった。付近は原生林のような太いブナ林が続いている。緑陰のおかげで比較的涼しいのだが、ときどき木立から洩れてくるのは真夏の陽射しである。樹林が所々で途切れると、容赦のない陽射しが全身に降り注いだ。シャツはたちまち汗でぐっしょりとなり、袖口や裾からは汗が滴り落ちた。

急坂を登るとやがて岩稜となり、見晴らしのよい場所に出た。「田子倉眺め」と標識があり、振り返ると田子倉湖が望める。しばらくヤセ尾根の岩場を登ると剣ガ峰だった。付近にはゴヨウマツが目立つ。ここでは多くの登山者が休憩をしていた。正面左手には只見沢をはさんで、鬼ガ面山の絶壁が目前である。まるで谷川岳の一ノ倉沢の岩壁を髣髴させるようなすごい迫力だ。みんなこの絶壁や田子倉湖をバックに写真をとりあっていた。

剣ガ峰からはいったん緩い尾根を下り、再び登り返す。そこから山頂まではきつい登りが続いた。剣ガ峰から浅草岳までの標高差は約450mぐらいあるが、急な斜面をぐいぐいと登るので、たちまち高度を稼ぐことができる。剣ガ峰を過ぎると涼しい風が吹いた。鬼ガ面山から吹き下ろしてくる風は、汗をかいた体に心地よく、なんとも言えぬ心持ちになる。付近には残念ながら花はほとんど見あたらなかった。それでもマツムシソウやオニアザミ、ノリウツギなどがポツリポツリと咲いていて疲れた体を癒してくれるようだった。山頂が近づくにつれて、道はジグザグの急な登りになってきた。途中にロープが何カ所か設置されてはいるものの、慎重に登らなければならなかった。

汗を振りまきながらも浅草岳山頂には2時間ちょっとで到着した。山頂には標識や祠と大きな一等三角点がある。新潟県側から登ってくる人もかなり多いのだろう。休んでいるとぞくぞくと入広瀬村側から登ってくる。また前岳へ向かう草原ではビニールシートを広げて多くの人達が休憩している。この浅草岳からの展望は抜群で、田子倉湖や鬼ガ面山はもちろんのこと、守門岳、未丈ガ岳、越後三山、燧ヶ岳、会津駒ヶ岳などの会越の名山がすべて見渡せる。昼食にはまだ時間が早かったので、私は腰を下ろして、しばらくこれらの山々を飽かずに眺めていた。それから濡れたバンダナなどを乾かしながら、汗が引くのを待って昼食をすることにした。弁当を開いて、味噌汁を沸かす。アイスボックスに入れてきた冷たい漬け物がことのほかおいしい。そして食後は普段より濃いめのコーヒーをドリップした。まだ8月の盛りなのだが、涼しい風が吹き渡る穏やかな陽光の下でコーヒーを飲んでいると、時間の経つのを忘れそうだった。山頂でこんなにのんびりと過ごしたことは最近にないほどである。いつか陽春の頃、再びこの浅草岳を訪れたいものだと、私は田子倉湖を見下ろしながら考えていた。


浅草岳山頂から田子倉湖を俯瞰する



前岳との鞍部付近の草原で昼食や散策を楽しむ登山者


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