山 行 記 録

【平成13年7月18日(水)〜21日(土)/朝日連峰 日暮沢から大朝日岳、以東岳】



お花畑と相模山(寒江山付近)
[2001.7.20]



【メンバー】2名(宮本、蒲生)
【山行形態】夏山装備、避難小屋泊(3泊4日)※山行は2泊3日
【山域】朝日連峰
【山名と標高】古寺山1501m、小朝日岳1647m、大朝日岳1870m、西朝日岳1814m、寒江山1695m、以東岳1771m
【天候】(19日)曇り時々雨、(20日)晴れ時々曇り、(21日)晴れ
【温泉】柳川温泉200円
【行程と参考コースタイム】
(18日)飯豊町の道の駅「めざみの里」で宮本氏と合流1500〜日暮沢小屋着1830(泊)
(19日)日暮沢小屋500〜林道終点525〜取付540〜ハナヌキ分岐750〜三沢清水835〜古寺山925-950〜
     小朝日岳1030-1100〜銀玉水1215〜大朝日小屋1310(泊)
(20日)大朝日小屋600〜西朝日岳730〜竜門小屋850〜寒江山1030〜狐穴小屋1130〜以東岳1250〜狐穴小屋1400(泊)
(21日)狐穴小屋600〜寒江山650-715〜竜門小屋800〜竜門山〜ユーフン905〜清太岩山〜日暮沢小屋1145

【概要】
今年の海の日の連休は、冬山を共にしている友人、宮本氏との初めての朝日連峰である。当初の予定では小国口から泡滝ダムまでの縦走を考えていたが、初日の大朝日岳までの長い行程を考えて、日暮沢小屋からの周回コースに変更した。周回コースとはいえ、以東岳まで足を延ばすので変則的な縦走ともいえる。結果的には歩く距離は当初の予定と同じくらいか、それ以上の行程となった。

[2001.7.18]
飯豊町の道の駅「めざみの里」にて約半年ぶりに再会した我々は、早速私の車に荷物を移動し、一路日暮沢小屋に向かった。寒河江ダム付近から小雨が降り出し、日暮沢小屋に着く頃は本格的な雨になっていた。日暮沢小屋の前には平日とはいえ車が3台駐車中だった。すでに辺りは薄暗く、ヘッドランプをつけてザックなどを小屋に運ぶ。小屋に入ってみると、先客は2階に夫婦者が二人だけで、我々は3階を借りることにした。新しく快適な小屋は我々の貸し切り状態で、その夜、久しぶりの再会を祝して二人で乾杯した。

[2001.7.19]
日暮沢小屋では、いつのまにか入り込んだ蚊には刺されるし、蒸し暑くて寝苦しい夜だった。四時に起床して、外に出てみると、今小屋に着いたばかりという、女性二人が竜門山を目指して登って行くところだった。雨だけは降らないものの、空は灰色でどんよりとしている。薄い靄に包まれた根子川沿いの山道を歩き始めると30分ほどで尾根の取付で、そこからはかなりの急坂がしばらく続く。最初から汗が吹き出て、シャツがすぐにびしょぬれになった。しかし、早朝ということもあり、気温がまだ上がっていないので意外と快適である。蒸し暑い樹林帯の登りを覚悟していただけに、ホッとした。ただ、汗のにおいにつられてか、大量のブヨが体中にまとわりつき、しばらくつらい思いをする。防虫スプレーを使っても体中のあちらこちらを刺された。古寺山まで来ると赤トンボが多数飛び交い、ブヨの攻撃からやっと解放された。小朝日岳では乱舞ともいえるほどのおびただしい赤トンボが空を舞っていた。ガスは一向に晴れなくて、残念ながら小朝日岳からの展望はなかった。熊越えを過ぎたあたりからぱらつき始めていた雨は、銀玉水で止まなくなり、小屋までは雨具を着て登った。

大朝日小屋には1時過ぎに到着した。小屋には管理人の他にはまだ一人しかいない。二階にザックをおろし、しばらくしてから、銀玉水の水で冷やしたビールで早速乾杯する。2時頃になって、小屋の中が暗くなってきたなと思っていたら、急に雷鳴と共に大粒の雨が降り出してきた。風雨ともいえるほどで、今日早めに日暮沢を出発したことを喜んだ。その後、宮本氏は疲れたのかシュラフに潜り込むとすぐにいびきをかき始めた。夕方近くになり、雨も上がり薄日が差してきたので、山頂までいってみようと宮本氏に声を掛けたのだが、疲れたのかまだ起きる様子がない。私は雨具を着込み、カメラだけを持って一人で出かけた。山頂では上空は青空だが、周辺の山々はまだ雲に隠れて見えない。雲が次々と湧き出しては流れていた。明日はきっと晴れるだろう、と私はしばらく山頂から眺めていた。

小屋に戻ると何人か登山者が増えていた。朝、日暮沢小屋で出会った女性二人組も 遅くなって小屋に到着した。悪天候の中を竜門山から縦走してきたらしく、ずぶぬれの様子である。二人は濡れた衣服を管理人室を借りて着替えていた。結局、小屋への宿泊は8人だけで、連休前の平日ということもあり、広い部屋の中でゆったりと過ごすことができた。

日没が近くなってようやく雨も上がり始めていた。私は小屋の窓から、少しずつ西朝日岳に沈もうとしている夕日に見とれていた。薄紅に暮れなずむ荘厳な山の景色を眺めているといつまで眺めていても飽きなかった。みんなが寝静まってから夜中に小屋の外を覗いてみると、満天の星空である。そして遠く庄内方面では落雷が続いていて、稲妻が不気味に暗闇に輝いていた。

[2001.7.20]
翌朝はガスに包まれていて、ご来光は見られなかった。その後も空はガスに隠れたり晴れたりを繰り返した。下界は雲海が広がっていて、好天の兆しが見える。朝食を済ませ、ザックをまとめると、西朝日岳に向かう前に二人で山頂をピストンすることにした。山頂では朝の涼しい風が吹いている。山頂からは雲海に浮かぶ山々が美しかった。

西朝日岳付近から急に風が強まってきていた。ガスも濃くなってきて、一時視界がなくなるほどだった。こんな中、竜門小屋を早朝発ってきた登山者と多数すれ違った。全部で30名ほどだったろうか。聞いてみるとほとんど日暮沢小屋から大朝日小屋に向かったものの、昨日の昼からの悪天候で、みんな竜門小屋で足止めを食ったようである。

竜門小屋に着いてみると、誰もいない小屋の前で水だけが豊富に出ていた。不穏な黒い雲が西の空から広がり始めていた空も、小屋で一休みしているうちに晴れてきて、遠く以東岳までも見えるほどになった。寒江山の斜面には、ニッコウキスゲ、イブキトラノオ、ハクサンフウロ、ハクサンイチゲ、ヨツバシオガマなどが咲いている。この付近はミネウスユキソウの群落が見られるところだが、盛りはとっくに過ぎていて、もうほとんどが枯れていた。

南寒江山から寒江山、北寒江山、三方境と、この区間は朝日連峰でもなだからな尾根道が続くところである。陽射しは強まっていたものの、風があるので快適な稜線歩きだった。
狐穴小屋前では大勢の登山者が休憩していた。まだ昼前なのでこれから大朝日岳に向かう人達のようである。今日は連休の初日なのでこの狐穴小屋も満員になるのだろう。我々は二階の一角を確保しザックを下ろした。予定では二人で以東岳をピストンするはずだったが、宮本氏は疲れのためか本調子ではなく、私一人で以東岳を往復することにした。

狐穴小屋周辺ではキンコウカやミヤマリンドウが盛りである。以東岳へ向かう途中にも様々な高山植物が咲いているので、そのひとつひとつを確かめながら歩いていると、縦走の疲れを忘れさせてくれるようだった。以東岳山頂には誰もいなかった。すぐ真下に見える以東小屋周辺にも人影は見当たらずひっそりとしていた。この以東小屋のトイレは今年の春に焼失している。そのため宿泊者はそれほど多くはないのかもしれなかった。山頂からは大朝日岳まで連綿と続く縦走路を眺めるのを楽しみにしてきたが、あいにく薄いガスが覆ってしまい、遠くまで見渡すことができなかった。山頂で15分ほど休憩し以東岳を後にした。

以東岳から狐穴小屋に戻ってくると、偶然に小屋前で山形の多田さんと再会した。多田さんとは昨年の11月下旬、初冬の大朝日小屋で一緒だった人である。2日目の吹雪による停滞のことなどを思いだし、話は尽きなかった。多田さんは今回もまた大判のカメラを担ぎ上げている。話をしているうちに、多田さんの作品は先ほどの以東小屋などに掲示されている事を聞き、小屋を覗いてみるのだったと後悔した。

その後、登山者は夕方遅くになっても次々と到着してきて、小屋はほぼ満員になった。小屋の中では食事をできる状況ではなく、ほとんどの人達は外で夕食をしていた。そして暗くなってからみんなシュラフに潜り込んできた。その夜、ラジオを聴いていると東北地方の南部が梅雨明けしたようだった。いびきの音や大勢の宿泊者の熱気などで寝苦しい夜であった。

[2001.7.21]
最終日は久しぶりに朝から晴れていた。以東岳付近には真っ白い入道雲が湧き、青空が広がっている。梅雨が明けたというのはどうやら本当のようだった。宮本氏は疲れもすっかり取れたらしく、体調はかなりいいようである。今日は下山するだけとはいえ5時間以上の行程があるので、宮本氏の元気な様子にホッとした。

ユーフン山から清太岩山の尾根道は、日射しは強いものの、風があるので快適に歩けたが、樹林帯に入ると風は全くなくなった。途中のゴロビツ清水で休憩を取り、その後はひたすら長い尾根道を下った。日暮沢小屋に到着したのは、昼近くになっていた。二人ともTシャツが絞れるほど汗だくになっていた。駐車場には人影はなく、夏の強い日射しが照りつけている。小屋前の駐車場は満杯で、入りきれない車は林道沿いに延々と駐車されていた。

下山後は大井沢トンネルから大江町に抜けて、山あいにある「柳川温泉」で朝日連峰の汗を流した。宮本氏は久しぶりの山行で、白かった肌がすっかり日に焼けてしまい、熱いお湯はつらそうだった。入浴後は、すぐ近くの「柳川ソバ」で今回の山行を締めくくった。



雲が湧く、小朝日岳(大朝日岳山頂から)
[2001.7.19]



西朝日岳に日が沈む(大朝日岳避難小屋から)
[2001.7.19]



南への縦走路と祝瓶山(大朝日岳山頂から)
[2001.7.20]



以東岳から大鳥池
[2001.7.20]


池塘と以東岳(狐穴小屋近く)
[2001.7.20]



ハクサンイチゲと西朝日岳(竜門小屋前で)
[2001.7.21]


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