山 行 記 録

【平成13年6月30日(土)/真昼山地 和賀岳】



コケ平(横岳)山頂からの和賀岳



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】真昼山地
【山名と標高】和賀岳1440m
【天候】曇り時々晴れ
【温泉】北上線「ほっとゆだ駅」(200円)
【行程と参考コースタイム】
高下登山口800〜高下岳分岐855〜和賀川渡渉地点920〜コケ平1030-1100〜和賀岳1130-1200〜和賀川1310-1330〜高下岳分岐1400〜高下登山口1440

【概要】
和賀岳は岩手・秋田県境に位置している、真昼山地、あるいは別名、和賀山塊と呼ばれる山並みの主峰である。「残された東北の秘境」とか「東北のミニ日高」とガイドブックに書かれている和賀岳は、かなり前から心惹かれる存在だった。この週末の山形以南の天候は大雨も予想されることから、できるだけ北に向かうことにし、この以前から気になっていた和賀岳を登ることにした。登山口からの単純な標高差は910mぐらいだが、途中、和賀川への渡渉地点まで200mあまり下らなければならないので、あわせると1100mの標高差を登ることになり結構ハードなコースである。また、渡渉箇所については「通常、膝ぐらいまでの水深が、融雪や大雨のあとは増水により、通過がむずかしくなる」と書かれてある点も、このところの梅雨前線の影響で雨が降り続いたことを考えると、心配なところだった。

未明の2時半に自宅を出発した。まだ外は真っ暗である。R287号,R347号,R13号,と北上し、横手市からはR107号に入り、登山口到着は7時半になっていた。途中で少し休憩したとはいえ、やはり岩手は遠いなあとあらためて思う。

高下の集落から林道をしばらく走ると、りっぱな標識がある登山口に着く。駐車スペースは特にないので車は道路の片側に寄せた。すでに3台が留まってある。その内の1台の夫婦連れが準備を終えて登り始めるところだった。当然、和賀岳への登山と思ったら、今日は高下岳までの予定だという。やはり前日までの雨で、和賀川の渡渉は困難が予想され、無理はしないという判断らしかった。高下岳も和賀岳とほとんど同じ様な標高があり見晴らしもいいので、私もそちらを勧められた。高下岳へは和賀岳の登山道を1時間ほど登ってから途中の三叉路で右に別れる。私は一応和賀岳に行くことにして、渡渉が難しい場合は、引き返してから高下岳に登ることも予定に入れながら登り始めた。

道は最初から急勾配のため、おのずとゆっくりとしたペースで登った。ブナ林の途中で一休みしていると、下から早速一人登ってきて越していった。ザックは小さく軽装である。日帰りなのにいろいろとザックに詰め込んできたのを少し後悔した。上空には木立の間から久しぶりに青空が見えた。梅雨の合間で湿度が高いのか、止めどなく汗が流れた。

しばらくすると、高下岳への分岐点である三叉路にでた。ここから道は緩やかな登りになり、途中水場に下る道を左に見ながらしばらく登ると、今度は一転して急な下りになった。200m以上の下りはやはり長い。せっかく稼いだ標高を捨てるようなものである。道は急斜面のうえ、滑りやすいので気が抜けなかった。やがて沢の流れがだんだんと大きくなり、和賀川の渡渉地点に着いた。流れは激しいものの、水深は心配したほどではなく、せいぜい膝くらいまでなので、靴は脱がなくともよさそうである。川幅は約5mほどで、一番水深が浅そうなところを渡渉した。すこし濡れたものの、スパッツのおかげで靴への水の浸入は僅かで済んだ。対岸に渡るとほっと胸をなで下ろす。対岸の少し上はキャンプ場になっていた。

ここからコケ平までは標高差620mを一気に登る。かなりの急勾配の道だった。汗を十分搾り取られた頃、道は急に開けてきた。笹とハイマツが絡み合うヤブを少し漕ぐともうそこは森林限界となり、広い台地のようなコケ平に着いた。めざす和賀岳は目前だった。ここで先を登っていた宮城の単独の人と山の話などをしながらしばらく休憩した。その人は内出氏といい、飯豊、朝日についても詳しく、全てのコースを歩いたことがある経験の持ち主ということを聞き、話しも思わず弾んだ。

朝方見えていた青空は薄雲に隠れてしまい、霞がかかったような天候に変わっていた。遠方の山々は見えないが、大朝日岳を思わせるような目前の和賀岳をしばらく眺めていた。とても1400m程度の山とは思えないほど、アルペン的な山容で高山の雰囲気を漂わせている。穏やかな陽射しの中での休憩は時間が経つのを忘れてしまいそうだった。

コケ平からは内出氏と一緒に歩いた。和賀岳へは快適な稜線をたどりながらの100mほどの登りである。途中は笹が生い茂ってヤブのような状態になっている。ようやく到着した山頂では全体に薄く霞がかかってはいるものの、遮るものがない360度の展望が広がっていた。山頂には一等三角点と祠が設置されてあった。静かな山頂を予想していたが、意外なことに、4〜5人ほどが先に来ていて休んでいる。高下からではなく秋田県側、つまり薬師岳の方からの縦走者のようだった。

それから私は昼食をやはり宮城の内出氏と一緒に楽しんだ。前方には薬師岳への稜線が続いていた。後方には高下岳らしきピークが目前で、その左手には朝日岳がすぐ近くに聳え、遠く秋田駒ヶ岳も望めた。岩手山は霞みがかかっているためによくわからなかった。

下山は往路を戻った。いつもは1人だとほとんど休憩もなしに下るだけのところだが、今日は話し相手がいるのでゆったりとしたペースで下った。和賀川の渡渉地点からはまた200mの登り返しが待っている。疲れた体にはかなりこたえる登りである。宮城の内出氏と共に川原に腰をおろすと、また山の話に花が咲きはじめて、いつのまにか時間が過ぎていった。

下山後は内出氏に案内されて、北上線の「ほっとゆだ駅」で汗を流した。ここは温泉が併設されているユニークな駅として有名なところだった。風呂から上がり外に出てみると、辺りはすっかり薄暗くなっており、いつのまにか雨が降り出していた。



高下登山口




和賀岳山頂にある祠



下山後、宮城の内出氏に案内されて、北上線のほっとゆだ駅
で入浴する。ここには温泉が併設されている。


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