【平成13年4月29日(日)/月山 石跳川コースを下る】
月山山頂の肩に立つ鍛冶小屋
屋根は見えているが、まだ雪に埋もれていて営業はしていない
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前日の鳥海山からはまっすぐに月山に向かい、姥沢の駐車場には夜8時過ぎに到着した。ヘッドランプを灯しながらのテント設営だった。駐車場では車中泊で仮眠している人も多かったが、ほかにも5〜6張りほどのテントが所々に張られていた。夜は就寝後も駐車場にはぞくぞくとマイカーが上がってきたために、エンジン音がうるさくてなかなか寝付かれなかった。
翌朝、早めにリフト乗り場まで行くと、すでに7時半前からリフトは動いていた。普段の営業時間は8時からなので、これは連休期間の特別サービスだろうか。リフト終点から見上げると月山山頂付近の雪はかなり少なかった。2週間前と比べると全然違う山の様相に驚く。このことろ、猛暑ともいえるような日々が続いているために雪が一気に解けたようだった。
早速シール登行を開始したものの、いつものことだが、登りはじめの急登がつらい。登りはじめは薄雲に覆われているため涼しかったが、やがて日差しも差し始め、汗が止めどなく流れた。今日は足が妙に重くて何度も立ち止まらなければならなかった。歩いていればいつかは着くだろう、と自らを励ましながらのシール登行が続いた。昨日までの鳥海山の疲れがたまっているようだった。後ろを振り返ればぞくぞくと登山者や山スキー、スノーボードを担いだ人達が登ってきていた。山頂直下の急斜面の途中からは雪が全くなくなったので、スキーを担いで登り、10時少し前に月山の山頂に到着した。山頂からは念仏ヶ原を眺めながら、2週間前、肘折温泉まで下った長い2日間の行程を思い浮かべていた。
牛首を目指して登る登山者たち(金姥付近で)
冒頭に書いたように、清川行人小屋への途中から月山山頂に戻った私は、再びシールをはずして金姥に向かって滑降を開始した。下からはまだまだ山頂を目指して登ってくる人も多い。牛首付近では山スキーを担いだ人が列をなして登ってきていた。ここを滑降するのは、さながら観衆の目前でテレマークを披露するようなものだった。テレマークターンを繰り返しているとみんなが立ち止まって眺めている。幸いに転ばずに済んだが、もちろんこれはスキーと雪質のおかげである。
金姥の鞍部からは予定通り、石跳川コースを下った。快晴のもとで適度な緩斜面を滑るのは快適そのもの。姥ガ岳を大きく回り込み、南斜面のブナ林まで一気に下ってしまった。雪面に腰を下ろして休憩していると、ウグイスの鳴き声と石跳沢の雪解けの流れる音が聞こえるだけである。降り注ぐ陽射しと長閑な山の風景。ここは桃源郷ともいえる場所だった。ネイチャーセンターから登ってきたらしい人達がところどころで休憩している。正面を見上げれば湯殿山の山頂に小さく人影が見えた。
昼食はいつものようにテルモスからお湯を注いでカップラーメンをつくる。そして食後はコーヒーをドリップした。ザックを背にしてしばらく横になっていると、心地よい風が体の上を通り過ぎていった。いつのまにか体が温まってきていつまでも休んでいたいほどだった。
石跳川を下る途中のブナ林
前方、左手には湯殿山、右手には姥ガ岳が迫る