【平成13年4月28日(土)/鳥海山 大平から吹浦、千蛇谷コース】
御浜小屋から快晴の鳥海山を仰ぐ
雪は昨年と比べて極端に少なく感じるが、昨年は4月に降った雪があまりに多すぎたということだろう。振り返れば、少し霞がかかっているものの、眼下に日本海が見渡せた。ここのコースは御浜小屋からずっと日本海を見下ろしながら滑降ができるので、下山がおおいに楽しみなところである。最初のつらい急登にしばらく汗をながした。
1396mに立つ反射板のところまで登ると、この先はなだらかな雪原が御浜小屋まで続く。この大きな反射板は広い雪原の中で唯一目印となるところだ。春の鳥海山は全山、無木立といっていいほどで雄大な大斜面が広がっていて、圧倒されるばかりだ。この広大な雪原を目の前にしていると、すでに雪が消えてしまった平地とのあまりの違いに、季節感を失ってしまいそうである。
御浜小屋から見る鳥海湖はまだまだ雪におおわれていて、ただの真っ白い雪原だった。小屋からは扇子森のピークまでわずかに登り、千蛇谷に直接下りることにした。せっかく自分の足で稼いだ標高だったが、シールをはずして一気に200mほどくだる。千蛇谷を見下ろすと、鳥越川を登ってきたらしい2人組が小さく見えた。二人とも山スキーだった。二人は取り付きを早朝6時30分に出発したという。歩き出してからもう5時間近く経っている。鳥海山の山頂まではまだ1時間以上もかかるので、二人の体力にはただただ驚く。
七五三掛から千蛇谷に下りても山頂まではかなりの雪渓歩きが必要なのだが、今日はその遥か手前で千蛇谷に下りたせいで、私はそのきつい登りに思わず顎が出そうだった。千蛇谷をいよいよ登り詰めると新山が目の前に迫った。私は山頂直下でスキーをはずして新山まで往復することにした。右手の岩陰をのぞくとちょうど山頂の小屋が建っている。大物忌神社である。まだ雪に埋まっていて屋根だけが見えた。巨大ともいえる石積みのような溶岩帯を登りつめると山頂(新山)だった。山頂では祓川から登ってきた登山者も多くいて賑わっていた。
千蛇谷のつらい登りのためにしばらく動けそうもないほど疲れていたが、山頂からの景観を目にすると登りの疲れなど忘れてしまいそうだった。長い急登に耐えた余韻に浸りながら、山頂の岩陰に腰を下ろし遅い昼食をした。食後、スキーをデポした地点に戻ると、貼ったままにしていたシールはすっかり乾いていた。早速、滑降を開始する。苦労して登ってきた千蛇谷である。惜しむように、それでいて大胆に大きくターンをしながら下った。千蛇谷を登り始めた地点まで一気に下ることも考えていたが、両足は相当に疲れている。扇子森への1時間ほどの登り返しがつらそうで、結局七五三掛から外輪山にトラバースした。ここも急斜面が千蛇谷に切れ落ちているので緊張感が走るところだ。
七五三掛から御田ケ原までは夏道がでているのでスキーを担いだ。扇子森から先はシールをはずして日本海を見下ろしながら下るだけである。ゆるやかに、そしてどこまでも広がる雪原を大きくターンしながらのんびりと下っていった。しかし、いくらゆっくりと滑ってもスキーだと本当に短時間で下ってしまう。反射板まで下ったところでコーヒータイムにした。そこからは駐車場まではひと滑りを残すだけである。穏やかな午後の陽射しを浴びながら雪面に腰を下ろし、遠く日本海を見下ろしていると、いつまでもそうしていたい誘惑にかられてしまいそうだった。
日本海を背にして吹浦コースを登り始める
千蛇谷を登る(稜線は外輪山)
千蛇谷の長い登りがきつい
新山の山頂で