【平成13年4月8日(日)/吾妻連峰 西吾妻から若女平】
西大巓と西吾妻小屋
例によってリフト終点で登山者カードを提出する。今日はいつもよりツアーザックを背負った人達が目立つ。その人達はシールを貼り早速登っていった。人形石の方に直登していったのでたぶん大沢に下る人達なのかもしれない。私はカモシカ展望台をめざし、右寄りのコースに進む。北望台の上空には昨日より雲が多く、陽射しが遮られると肌寒かったが、樹林帯に入るとひと登りしただけで背中が汗ばんできた。まわりのオオシラビソの樹林はちょっと前までは見事な樹氷となっていたものが、今はもう見る影もない。雪はかなり締まってきており、どこでも登って行けそうだった。1月に一人で膝上のラッセルに苦労したのが今では懐かしかった。
ほどなくカモシカ展望台に着く。付近には誰もいなかったが、早めに登った人達が梵天岩への斜面を登っているのが小さく見えた。ここからの下りは短いのだがシールを外して下った。中大巓と梵天岩への鞍部までは歩くと10分ほどはかかるところもスキーだとあっという間である。登りにさしかかったところで再びシールを貼りなおした。。
西吾妻山山頂は風もなく穏やかだった。順調すぎて、たちまち小屋に着いてしまいそうなため、ザックを下ろしてコーヒータイムにした。中大巓、東大巓、そして一切経山、東吾妻山へと連なる吾妻連峰を眺めながらコーヒーを飲んでいると、一人、二人と山スキーをはいた登山者が近くを通り過ぎていった。
西吾妻小屋へ向かう前に山頂から東斜面を一滑りすることにした。西吾妻山の他の斜面には樹林が多いのだが、この東斜面だけは無木立になっていて何人かが滑ったシュプールが残っている。すりばち状の底まで一気に滑り降りた後は、またシールを貼りなおした。
西吾妻小屋には人影が見あたらなかったが、中に入ると2階から何人かの話し声が聞こえた。スキーは見あたらないのでワカンの登山者達かも知れなかった。今日は外の方が暖かいので私は小屋の近くにザックを下ろして昼食にした。久しぶりにガスコンロでお湯を沸かし、ラーメンを煮る。先日までの厳しい冬の西吾妻からは想像できないほど、今日は穏やかな日和だった。
食後、幾分肌寒く感じる風が吹いてきた小屋を後にして下り始めた。樹林帯に入ると風は止み、たちまち気温が上昇してきて汗が流れてきた。いままで、若女平はほとんど尾根沿いに下っていたが、今日は沢筋を下ってみることにした。スキーのトレースはほとんど尾根沿いに残っていて、沢筋には今日下ったと思われるトレースが一人分だけ先へと続いている。私は雪がある程度締まっていて雪崩の危険が少ないと判断。大きく左岸側を回ってみたりした。これが意外というか面白いのである。こんなに楽しい若女平下りは初めてだった。快適なテレマークスキーである。
トレースからも離れて沢筋をずっと下ってきたために、いつもと違って若女平は左に卷くようにしながらダケカンバ林に入っていった。付近は緩斜面というよりはほとんど平坦な樹林帯。このまま下るのがもったいなくて、ダケカンバ林でコーヒーブレイク。林の中にはさんさんと陽が降り注いでいて、風もなく穏やかで、日長一日、日向ぼっこでもしたくなる場所だった。
そのままダケカンバ帯を下って行くと、まもなくこのコースの核心部のヤセ尾根が現れた。左は急斜面で、右側がスッパリと切れ落ちた馬ノ背となっているところである。いつもここではスキーを担いでいたが、今日はなんとか滑れそうな気がした。慎重にブレーキをかけながら進む。ヤセ尾根をスキーを履いたまま通過したのは初めてだった。といっても技術が上がったわけではなく、プラスチックブーツはそれほど安定感があるということだろう。
なんとかヤセ尾根をやり過ごしたが、この先も気を抜けない箇所が続く。次のヤセ尾根もなんとかスキーを横滑りさせながら凌いだが、最後の絶壁のような崖地ではさすがにスキーを担いで坪足でくだった。そこからは杉の伐採地で、短いが急斜面のため慎重に下る。そして林道に出れば終点の西吾妻スカイバレーはまもなくだった。
さすがに楽しいテレマークもこの2日間で体はもう動けないほどに疲れていた。
帰りに入った白布温泉の風呂から上がると、もう放心状態で、1時間以上眠ってしまった。
西吾妻山
西吾妻山と天狗岩の鞍部付近で
若女平のダケカンバ林で
風もなく穏やかで、日向ぼっこでもしたくなる場所だ
若女平コースの核心部、ヤセ尾根
両側がスッパリと切れ落ちているので
慎重に通過する