【平成13年3月24日(土)/吾妻連峰 デコ平から西吾妻と二十日平】
グランデコスキー場は陽気に誘われてか大勢のスキーヤーで溢れていた。ゴンドラとリフト1本を乗り継いだリフト終点はデコ平と呼ばれているところで、標高は約1530m。西大巓は約1981mだから、堅く締まった雪ならば約2時間ぐらいだろう。シールを貼り早速登り始める。ツアーの標識などは見当たらないが、どこから登っても行けそうだった。付近はオオシラビソの樹林帯だ。スキー場の騒々しい音は100mも登ると全く聞こえなくなった。陽は燦々と降り注いでいる。いつもならフリースかアウターを着るのだが今日はウールのシャツ1枚で十分である。しかしこれでも暑く汗は流れる一方だった。全く初夏のような陽気だった。登りはじめはトレースがなかったのだが途中からスキーのトレースが現れた。何人かが登っているようだ。気温が上昇し、雪はもう腐れはじめておりザラメ雪に近い状態である。
西大巓への途上、背後に見える磐梯山
西大巓山頂では早めに登った人が二人休憩中だった。二人とも山スキーである。山頂からは文句なしの展望が広がっている。正面には飯豊連峰と朝日連峰。そして背後には裏磐梯の湖沼群を従えた磐梯山が堂々とした姿を見せている。もちろん右手の西吾妻山へと続く広大な樹氷原にも圧倒される。
西大巓と西吾妻山までの鞍部までは距離そのものは短いが、広々とした斜面がもったいなくて、いったんシールをはずして下った。
西吾妻小屋では先客の登山者が数人休んでいるようだ。入口を出たり入ったりしている。いずれも山スキーの人たちである。天元台から登ってきた人達のようで、しばらくして若女平を下っていった。
西大巓山頂から見る飯豊連峰
西吾妻山から下ってきた登山者達
左に見えるのは朝日連峰
こんなに天気が良い日には小屋の中に入って昼食をする気持ちにもなれず、小屋の前で雪の上に腰を下ろした。いつものごとく、テルモスからお湯を注いでカップラーメンを食べる。ここで西大巓から前後して下ってきた単独行の人と再び出会い、食事をしながら話をしている内に、二十日平まで一緒に行こうか、ということになり、それから行動を共にすることにした。その人も二十日平は初めてだった。
小屋から西吾妻山山頂まではひと登りだった。広々とした山頂で再びシールをはずして、早速二十日平に向かって滑り始める。無立木の斜面は最初だけで、すぐに灌木帯だった。見通しが悪くはなるが、所々で眼下に二十日平が木立の間から見えるので滑る方角を軌道修正しながら下ってゆく。
そのうち下れば下るほど灌木が混み合ってきたので、斜滑降や横滑り、ボーゲンなどでなんとか凌いだ。なかなか快適なすべりとはゆかなかったが、天候があまりにいいので、気分的には楽しいばかりである。ある程度下ったところでうっすらとトレースも出てきた。縦横にシュプールがあるのでどれを追って良いのかわからないが、踏跡があることで何となく安心するのも事実である。このまま一気に下りきってしまうのが惜しくて途中の斜面で休憩を取る。スキーをはずして斜面に座ると、正面には遠くグランデコスキー場のゴンドラの建物が見えた。見上げればまぶしいほどの青空が広がっていて、気温も4月下旬のような暖かさだった。
なおも樹林帯の間を縫うように下りながら斜面をトラバース気味に進むと、やがて樹林もまばらになって快適な斜面が現れた。標高は約1300m前後である。この辺りが二十日平らしかった。ここではテレマークターンが面白いように決まる。ここは二十日平でもハイライトともいえる区間かもしれなかった。このままずっと続いて欲しいと思いながら滑っていたのだが、途中で沢を一ヶ所渡ると今まで以上に潅木も混み合ってきたために、快適な時間はそんなに長くはなかった。
深い沢を挟んでスキー場が右手に見えていた。下れるところまで下るとやがて道路が目の前となったのだが、沢が深いのでこのまま道路に下るというわけにはゆかない。幸いにスノーブリッジとなっている箇所があり、なんとかスキー場の駐車場には渡れそうである。しかし、いったんスキーをはずして沢まで下りなければならなかった。ここが今日のコースの終点であった。
なだらかな斜面が広がる二十日平
左奥は西吾妻山