山 行 記 録

【平成13年3月19日(月)/桧枝岐から会津駒ヶ岳】



会津駒ヶ岳(右)
見渡す限りの大雪原が広がっている



【メンバー】単独
【山行形態】テレマークスキーによる山行、冬山装備、日帰り
【山域】南会津
【山名と標高】会津駒ヶ岳2132.4m
【天候】晴れ
【温泉】桧枝岐温泉「駒ノ湯」500円
【行程と参考コースタイム】
自宅2.30〜桧枝岐村630
滝沢橋700〜林道終点の階段800〜共同アンテナ930〜会津駒ヶ岳山頂1230-1300〜滝沢橋1545

【概要】
会津駒ヶ岳はすぐ近くにそびえる燧ヶ岳とともに南会津の高峰としても名高い一方、すぐれた山スキーを楽しめる山としても以前から知られているところである。私は山中間と5年前の6月末にこの会津駒ヶ岳に登ったときに、山頂に広がる大雪原を眺めながら、まだまだ豊富な残雪に圧倒されたことがある。途中の水場もまだまだ雪に埋もれていて、この年は近年にない大雪の年であった。

コースは駒ノ小屋からキリンテ岳を巡ることも可能なのだが、今回は一般的な桧枝岐から会津駒ヶ岳を往復するコースを登ることにした。とはいえ標高差は1200mもあり、かなりの体力が必要なコースでもある。天気予報では全国的に移動性高気圧におおわれるとあって、好天は間違いなさそうだ。下山する頃には日が暮れることも考えられるために、自宅をまだ暗い3時前に出たが、桧枝岐村に入ったときにはもうすでに日は昇り青空も見えていた。

滝沢橋周辺には駐車場がないので路肩に駐車する。平日なのにすでに車が3台留まってあり、ザックを広げて登る準備をしている。雪が融ければこの滝沢橋から林道終点まで車が入れるのだが、今日はここからシールを貼って出発だ。高度計を900mにセットした。天気がいいだけに朝方は冷え込みが厳しかった。気温はまだまだ低く、雪道は堅かったが、登るにつれてだんだん柔らかくなってくる。林道を何回か回り込むと木の階段のある夏場の登山口に着いた。ここからはいったんスキーを担いで登る。尾根に取り付くまではかなりの急勾配で、一歩一歩キックステップで登った。最近、スキーとスキー靴を替えたためだろうか。足が重くやっとの思いで尾根の一角に取り付いた。


林道終点にある木の階段
夏道はここが登山口になっている




急斜面のブナ林を登る
ここを登れば標高1370m付近に立つ共同アンテナがある

初めはカラマツ林の尾根のつらい急登が続き、汗がしきりに流れた。やがてだんだんとブナ林の登りに変わる。雪質が悪いのだろう。新しいシールなのに妙に滑りやすく、ずっとジグザグに登らなければならなかった。この辺は細い尾根続きで勾配もきついところだ。まもなく休憩中の3人組に出会う。追い越したり追い越されたりするのを避けるために、私もここでザックを下ろし、先客が出発するのを待つことにした。

ここから急斜面をひと登りすると、ガイドブックにもある共同アンテナが立っていた。1370m付近のこのあたりには、ブナ林の緩斜面が広がっていて、下りのテレマークが楽しみな斜面だ。静かだった。聞こえるのは風の渡る音だけである。見上げれば春の陽射しが惜しげもなくブナ林に降り注いでいた。

登るにつれて止めどなく額から汗が流れた。気が付くと肩で息をしている。足がすでに棒のようだった。周囲がオオシラビソの針葉樹林帯に変わり、やがて左手には燧ヶ岳も見えるようになっていた。標高はおよそ1700m。しばし心地よい微風の中で腰を下ろし、呼吸を整えた。正面には燧ヶ岳が順光線を受けて輝いている。快晴の下でみずみずしい果物と冷たい水がうまかった。

なおも100mほど登るといよいよ樹林帯も終わり、白い大斜面が目の前に広がった。無立木のなだらかな斜面がどこまでも続いていた。右手の大きな山が会津駒ヶ岳だった。細いトレースが山頂まで続いている。何人か登っているようだった。山頂への最後の登りで後ろを振り返ると真っ白い雪原の中に駒ノ小屋が見えた。すっかり雪に埋もれており見えるのは屋根だけだった。

山頂が近くなって、2人の登山者が下りてきた。ピッケルを持ちながらのアイゼン歩行だった。そこからはひと登りで会津駒ヶ岳山頂である。夏場には樹林に囲まれていてほとんど展望がないこの会津駒ヶ岳も、今はさえぎるものがない360度の景観が広がっている。背丈以上もある山頂の標識も今は頭だけしか見えなかった。早朝に登り始めてから5時間半もかかってようやく山頂に到着したのだ。最近にない達成感だった。

記念に写真を撮ってから早速食事の準備をする。風が強かったが、耐えられないほどではなく、少しスコップで掘り下げて風をさえぎる場所を作った。汗を搾り取られた体に冷えたビールが染みていった。太陽はほとんど真上にあり、燧ヶ岳、至仏山、中門岳がまぶしかった。やがて山頂手前で休んでいた3人組も到着した。



快晴のブナ林がどこまでも続く



雪にすっかり埋まっている駒ノ小屋と燧ヶ岳



会津駒ヶ岳山頂
燧ヶ岳をバックに

いよいよシールをはずして滑降の開始だ。山頂からは東側斜面に大スロープが広がっている。このスロープは源六郎沢から下ノ沢へと続いていた。私は途中まで3人組と一緒に源六郎沢を歓声を上げながら下った。そして途中からトラバース気味に元の尾根に登り返した。源六郎沢へと落ち込んでいる斜面の中腹に立ってみるとかなりの勾配だった。気温も上昇し雪崩の危険もあることから、かなり慎重に通過した。緊張感が漂うところだ。陽気のせいで表面が融けだした雪は重く、快適な滑降はそう続かなかった。雪質がコロコロ変わるので足を取られては何回か転んだ。起きあがる度に体力がだんだん消耗していった。共同アンテナからは右手の尾根に進む。途中から往路の尾根との窪地の斜面に入った。ここは今まで以上の急斜面で、いたるところにデブリの跡があった。

林道を下る頃には疲れはてて一歩も動くのが大儀なほどだった。近くの桧枝岐温泉「駒ノ湯」で汗を流したが、車に戻り横になるとしばらく動けなくなってしまった。




会津駒ヶ岳山頂から源六郎沢を下る
快適な大スロープが下まで続く



会津駒ヶ岳から源六郎沢を下る
中央の黒い点は休憩中の3人である
(尾根に登り返した地点から撮影)


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