山 行 記 録

【平成13年2月10日(土)/吾妻連峰 吾妻スキー場から家形山(家形小屋まで)】



7年ぶりに訪れた家形小屋(標高約1700m)



【メンバー】単独
【山行形態】テレマークスキーによる山行 冬山装備、日帰り
【山域】吾妻連峰
【山名と標高】家形山 1,877m(家形小屋まで)
【天候】風雪
【温泉】高湯温泉 玉子湯(500円)
【行程と参考コースタイム】
自宅出発 610〜吾妻スキー場駐車場着 850
吾妻スキー場リフト終点950〜家形小屋1200-1245〜リフト終点1430

【概要】
残念なことに今日も朝から雪が降り続く荒れ模様の天候である。前日はめずらしく晴れ渡り、遠くの山々まで見渡すことができたのに、またまた週末の天候の悪さにはがっかりするばかりである。この連休は低気圧の通過で最悪の天候になるという。

冬期閉鎖中の有料道路、磐梯吾妻スカイラインの雪道を慎重に走る。すっぽりと雪に閉ざされたような高湯温泉を過ぎるとまもなく吾妻スキー場だ。駐車場に着いても横殴りの雪は降りやまなかった。見上げると山頂付近は風雪状態らしく、霞んでいてよく見えない。しかし、こんな天候でも一般のスキーヤーに混ざってザックを担いだ山スキーのグループが何組か準備をしていた。

今回の福島県の吾妻スキー場からは初めてなので前から楽しみにしていたところで、天候に恵まれれば吾妻小屋に宿泊してのんびりとテレマークスキーを楽しむ予定だったのだが、この天候ではとても望めそうもなく、家形小屋までの行程に変更し、車の中でザックのパッキングをし直しする。

3本のリフトを乗り継いだ終点付近は当然ながら吹雪き模様だった。ツアーコースの登り口では何組かのパーティが、風雪の中でシールの装着をしている。こんな悪天候なのによくやるなあ、としばらく感心しながら眺めていた。風の強さもハンパではなく、ただ突っ立っていると体ごと風にもっていかれそうだった。少し風が弱まるのを待ってみたが、なかなか納まる気配はないので、私も風を背にしてシールの装着を始めた。皮膚を切り裂くような寒気のなかで手が凍りそうだった。

登り始めるとすぐに樹林帯となり、風が和らぐので少しほっとする。時折目も開けられないほどの雪が吹き付けてくるものの、斜面はなだらかで登りやすかった。天候がよければスノーハイキングの気分で登れるようだ。所々に黄緑や赤色のテープの目印があるので、ホワイトアウトにでもならなければ特にルートは見失うことはない。しかし、早く登った人のおかげで今日は既にトレースがあるからなんとか登れるが、踏跡がなければこの天候では困難だろうと思った。

慶応山荘を示す標識を過ぎてからは少しずつ斜度が増した。このあたりからは木立もまばらになるので、吹きさらしの風雪が厳しいところだ。追分から大根森へ直登しているトレースを左に見送り、家形小屋へ続く右のトレースを進む。吾妻小屋を目指していた人達が間違って右に進んだらしく、何人か引き返してきた。風雪はますます強くなってきていた。稜線はたぶん吹き飛ばされるほどの強風が吹いていることだろう。平成6年におきた吾妻連峰の遭難事故を思い起こすような天候だ。松林の樹林帯をトラバースしながら小さなアップダウンを繰り返し、登り詰めたところでやっと家形小屋が見えてきてホッとした。

家形小屋では私の少し先に3人のグループが一足違いで到着したところだった。トレースのお礼を告げたら、既にスキーの踏跡があったらしく3人組も楽をさせてもらったと言っていた。3人とも福島で、何回かこのコースを山スキーで来ている人達だった。

この家形小屋は、部屋の一部に腰掛けるだけのスペースがあるだけで、あとはほとんど土間である。古い小屋なので贅沢はいえないが、本当の意味での避難小屋だ。少し湿っぽいが毛布まで用意してある。私は平成6年に吾妻連峰縦走の時に泊まって以来だからこの小屋は約7年ぶりだ。ツェルト、防寒着、食糧などは持ってきているので、小屋への到着がもう少し遅ければまた宿泊してもよかったのだが、まだ正午と早く、昼食をしてから下山することにした。3人とも悪天のためにここから引き返すという。早速、食事の準備にとりかかる。

今日はカップラーメンの簡単な昼食にした。3人組は缶ビールをあけて乾杯をはじめた。私もシェラカップに少しお裾分けを頂いたが、ハイペースで登ってきたせいか、体からは湯気が立ちのぼっていて、この冷えたビールがことのほか美味しかった。小屋の中にある寒暖計は氷点下6度を指していた。外の荒れ模様の割にはそれほど低くはなかったが、手は凍えるほどだった。食後にコーヒーを飲むと体の中から温まるようだった。小屋はほとんど雪に埋まっていて真っ暗なために入口のドアを開けたままにしていた。そのため食事中も終始、雪が小屋の奥まで舞い込んできた。小屋を出る頃には吹き溜まりとなった雪をスコップで掻き出した。ゆっくりと休憩時間をとりながら天候が少し回復するのを待っていたが、小屋の外の荒れ模様は治まる気配がない。家形山へは次回の楽しみとし、下山をすることにした。

途中に登り返しがあるので、シールは装着したまま下る。小屋を出ると、私たちが登ってきた時には深さ30cmほどもあったトレースは全くなくなっていた。追分まで戻ったところでようやくシールをはずした。そこからは新雪の滑りが待っている。ほとんどパウダースノーなので、へたなテレマークターンもなんなく曲がってくれる。しかし樹木を避けようとして深い雪にバランスを崩して、何回か雪の中に突っ込んだ。ザックも体も雪まみれになった。

途中、2、3人がザックを担いで登ってきたところに出会った。登るにはもう遅い時間なので尋ねてみると、今日は慶応山荘への泊まりらしかった。みな、高湯温泉の「安達屋旅館」に予約を入れてきた人達だったが、予約を入れていなかった二人の女性が、慶応山荘の管理人から宿泊を断られて先ほど下っていったことを聞いた。それほど小屋は今日混み合うということなのだろうか。冬山で小屋への宿泊を断られれば生死に関わることもあるだろうに、おかしなこともあるものだな、と思った。

そこからはまもなく斜面が緩やかになり、ストックでスキーを漕がなければならなかった。スキーリフトの終点まで戻ると、あとは高湯温泉を楽しみにゲレンデを一気に滑り降りるだけである。雪はますます激しく降るばかりで、ゲレンデは吹雪のためによく見えなくなっていた。




家形小屋の中で昼食
小屋の中に雪が吹き込んでいる




家形小屋の入口に貼ってある年代物のポスター


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