山 行 記 録

【平成12年12月29日(金)〜30日(土)/奥岳登山口から安達太良山】



くろがね小屋を出て峰ノ辻に向かう
奥に見えるのは安達太良山
[2000.12.30撮影]



【メンバー】単独
【山行形態】冬山装備、営業小屋泊(県営くろがね小屋)※自炊3,570円
【山域】奥羽山脈南部
【山名と標高】安達太良山 1700m
【天候】(29日)曇り時々雪、(30日)快晴
【温泉】岳温泉(300円)
【行程と参考コースタイム】
[2000.12.29]
自宅830〜あだたら高原スキー場駐車場着1130
奥岳登山口1200〜勢至平〜くろがね小屋1430(泊)
[2000.12.30]
くろがね小屋730〜峰ノ辻〜安達太良山山頂920-930〜馬ノ背〜矢筈が森〜峰ノ辻〜勢至平1130〜あだたら高原スキー場駐車場1230

【概要】
[2000.12.29]
予定ではどこかの山の上か山小屋で越年する計画だったのだが、なかなかそう思うようにはゆかず、大晦日を明後日に控えた29日の朝、安達太良山に向かった。今日はあいにくの雪空だったが、くろがね小屋までならばいくら天候が悪くともなんとかゆけるのもありがたいところである。久しぶりにくろがね小屋の温泉と冬景色を楽しみに登ることにした。

登山口であるあだたら高原スキー場はまだスキー客も少なくまばらだった。登山届けを記入しポストに投函して歩き始める。
登山口の積雪は40〜50cmほどで思ったより少ない。すでに何人かのトレースがありその跡をたどる。踏跡があるので夏道よりも歩きやすかった。私はスキー場の騒々しい音楽から逃れるようにして足早に登っていった。
今回は今シーズン初めてのプラスチックブーツを履いた。おかげで気温は氷点下だったがいささかもそんな外気温を感じさせず、さすがにプラブーツは暖かかった。汗ばんできたせいかザックと背中の間も熱気がこもってきた。久しぶりに気持ちの良い汗が流れた。途中で先を歩いていた3人のグループを追い越した。さらにその先でも数名の登山者を追い抜いてしまうとほとんど踏跡がなくなってしまい、それからは雪を漕ぐようにして進む。

勢至平を過ぎると、スキー場から流れてくる音楽も聞こえなくなり、やっと山の静寂が戻ってきた。
周囲は樹林もなく遮るものがないため、安達太良山からの吹き下ろしの強風と雪がビシビシと頬に当たって痛い。
しかし、この冷たさと厳しい寒さは、久しぶりに冬の安達太良山に来たことを感じさせた。

到着したくろがね小屋には休憩中の登山者がひとりだけ。私は2番目の到着であった。もっと大勢の宿泊者を予想していたので拍子抜けだった。管理人の橋本さんによれば今日の宿泊は全部で16名ほどだが、31日の大晦日にはすでに80名以上の予約が入っているという。定員はたしか80名だから当日は満員である。これから増えることも予想されるのでもしかしたらすし詰め状態かも知れない。考えようによっては今日は意外と穴場なのかもしれなかった。単独の客は今日はゆったりと大部屋に3人だけだった。

宿泊の受け付けを終えるとすぐに風呂に飛び込んだ。いつもながらこの温泉は極楽ものである。乳白色の温泉に浸っていると山旅の疲れが全部とれそうだった。湯に浸かりながら窓を開けると寒気と共に雪が舞い込んできた。雪は火照った体に気持ちがよかった。
風呂から上がり食堂でコーヒーを淹れた。外は吹雪である。窓から吹き荒れる様子を眺めながらコーヒーをのむと不思議に心が落ちつくようだった。その後はつまみを作りながらビールを飲み、文庫本を読んだりしながら山小屋の夕食を楽しんだ。
寝る前に小屋の外に出てみると、上空には粉雪が舞っており星空は見えなかった。玄関にある温度計は氷点下8度を差していた。
ラジオによれば翌日は天候は良さそうだったが、その夜、小屋の外では終始、風の音がやまなかった。



標高1346mに建つくろがね小屋[2000.12.29撮影]
いつもながら風雪の中を歩いてくると、この小屋が見えただけでホッとする



[2000.12.30]
翌日は予報通り朝から快晴だった。移動性高気圧におおわれるため今日一日は好天に恵まれそうである。
朝食後、ザックをまとめて早速登り始める。橋本さんによればここ最近は山頂へは誰も歩いていないから踏跡はないだろうと話していた。しかし今朝早く出発した登山者の踏跡がすでに山頂へと続いている。先を歩いていた登山者には峰ノ辻で追いついたがみんな牛ノ背へ向かっていった。私は人の踏跡ばかり歩いているのがつまらなくなり、峰ノ辻からは山頂への直登コースを進んだ。このコースはまだ誰も歩いていなかった。いったん下った地点では深い積雪に足を取られたものの、まもなくガレ場の急斜面となり雪は堅く凍っているので、途中でアイゼンを付けピッケルを出した。

安達太良山山頂に登り詰めるとちょうど牛ノ背経由の登山者がひとり登ってきたところだった。
山頂からは抜群の展望が広がっていた。近くには和尚山が目の前に大きく聳えている。いつかこの山から安達太良山にも登りたいと思っている山である。西には磐梯山。北には鉄山や箕輪山、遠くには吾妻連峰も見渡すことができた。山頂でこんなに展望に恵まれることは珍しい。それも冬山ではなおさらだろう。私は素直に今日の好天に感謝した。

下山は馬ノ背から峰ノ辻経由で勢至平に下ることにした。つまり昨日からのコースを合わせるとちょうど峰ノ辻で交差する8の字を描くように歩くことになり、往路と復路で同じコースを歩かないので一筆書きのようなものである。
山頂から牛ノ背、馬ノ背と続く稜線は雪は堅く凍り付いていた。馬ノ背からながめる沼ノ平は相変わらず荒涼とした風景が広がっていた。馬ノ背の南に聳える岩峰、矢筈ガ森付近では小屋を遅く発ってきた、山スキーを担いだ登山者が登ってくるところに出会った。

峰ノ辻に戻ると、そこから勢至平へのコースはまだ誰も歩いていないために、ワカンを装着した。ワカンを履くのは久しぶりで、うまくバンドで締めたつもりでも途中ではずれたりして、久しぶりの冬山の訓練になった形になった。ワカンを履いた状態で足は30cmぐらい沈んだが、潅木が埋まっている所では腰近くまで足が潜ってしまい抜け出すのに苦労した。勢至平が近くなったところでワカンを履いた登山者がひとり登ってきて、それからほどなくして勢至平にたどり着いた。短かったがワカンを使った雪漕ぎはそこで終わった。夏道よりもちょうど1時間くらいよけいに時間がかかっていた。ここで朝方作ってきていたテルモスのコーヒーを飲みながら疲れた足をしばらく休ませた。ここから奥岳登山口までは小一時間程度、下山後の岳温泉を楽しみに下るだけである。振り返れば篭山や安達太良山、そして右手には鉄山や箕輪山が快晴の空を背景にして真っ白に輝いていた。





日の出直後の光景(午前6:30頃)
くろがね小屋の入口から馬ノ背を仰ぐ




馬ノ背から沼ノ平を俯瞰する
有毒ガスが噴出する沼ノ平コースは現在も通行禁止である


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