山 行 記 録

【平成12年12月2日(土)/朝日連峰 日草沢から清太岩山(1345m地点で敗退)】



穏やかな冬の陽射しの中の日暮沢小屋



【メンバー】単独
【山行形態】冬山装備、日帰り(計画は小屋泊り)
【山域】朝日連峰
【山名と標高】清太岩山1465m(1345m地点で敗退)
【天候】晴れ
【温泉】水沢温泉館(200円)
【行程と参考コースタイム】
日暮沢小屋8:30(620m)〜ゴロビツ水場11:00〜1345m地点12:30-13:00〜日暮沢小屋14:30

【概要】
先週に続いて今週も朝日連峰である。しかし今回はあまりの積雪のために単独でのラッセルは困難を極め、目的の竜門山はおろか、手前の清太岩山までも登れず途中で敗退した。12月に入ってからの積雪は予想していたとはいえ想像以上に多く驚くばかりだった。この1週間、平地ではほとんど雪が降った様子がなかったのだが、やはり山での降りっぷりは全然違うようである。いともあっさりと前進を阻まれてみて、あらためて単独での12月の朝日連峰の困難さを再確認した形になった。


当初考えていた日暮沢小屋から大朝日岳への周回コースは先日の積雪の状態を考えれば難しいと思われるため、一応、竜門小屋までの1泊の予定で自宅を出発した。天候は今日いっぱい移動性高気圧におおわれるが翌日は大きく崩れる予報がでており、これは先週と全く同じだ。しかし積雪はこの1週間でかなり違っている。西川町の国道112号を走っているときから路肩に残雪が目立つようになり、大井沢に入るとますます多くなった。

久しぶりに到着した日暮沢小屋は他に車もなく寂しい雰囲気だった。ここ最近人が入った様子もなかった。周囲にはすっかり雪が積もっており、シーズン中のにぎやかだった頃とは様変わりである。積雪は10cm〜15cmぐらいか。この辺からこの雪では清太岩山までも登れるだろうかと不安が募った。雪は1週間前と同じぐらいだろうと考えてワカンを車に積んでいなかったのだ。まあ嘆いてみてもはじまらない。行けるところまで行ってみるか、と気を取り直した。

歩き始めると登山道には様々な動物達の足跡がずっと続いていて楽しかった。尾根道のせいもあるが登山者と同じように動物達も登山道を忠実に登って行くようである。足跡はカモシカやノウサギなどだろうか。ほかにも何種類かあったが動物には詳しくないのでよくわからない。しかしその足跡を横切るかのように横断している、丸く大きな足跡がたびたび現れる。それも比較的新しい踏跡である。もしかしたら熊だろうかと考えると不安になり、ずっと大きな声を出しながら登っていった。

標高1000mを越えると積雪はずっと多くなった。スパッツが埋まるぐらいだから50cm以上はあるだろう。なかなか足を上に引き上げることができず、一歩一歩がつらい登りだった。急斜面になるとそれがまた困難さが増した。手前の雪を崩さないと次の一歩が踏み出せない。さながら雪との格闘といった様相を呈してきていた。こうなるとラッセル用のストックもバランスを保持するのが精いっぱいだった。今日ワカンを持ってこなかったことを悔やむ。しかしワカンがもしあったとしてもこの急斜面でこの積雪では相当に困難ではないか、と思われた。

清太岩山までならばと登ってきたが、一方では一人でのラッセルの限界も感じはじめており、今日の目標地点をもっと下げざるを得なかった。せめて月山が見えるところまで登ろうと自分を励まし雪道を漕いだ。1200mを越えると雪はときどき股下までも届くようになった。もう体中、汗だくだった。

1345m地点まで登るとようやく青空を背景にして冠雪した月山を望むことができるようになった。
登り初めてからちょうど4時間が経っていた。夏道ならばここまでは2時間ぐらいしかかからない。清太岩山まではあとは120mほどの登りだったが、次の一歩を踏み出すことさえ難儀する中で、たった1mの高度を稼ぐのにも思いの外時間を費やさなければならなかった。もう前進するのはあきらめ今日はここまでにした。

ザックを下ろすと汗をかいた背中が急速に冷えてくる。天気は快晴だが吹く風は冷たかった。
足場を固めて場所を作り雪を解かしてラーメンの昼食にした。

誰も登ってくる気配がなく聞こえるのは風の音だけである。森閑とした冬の山にたった一人だけという雰囲気だった。葉の落ちつくした樹林帯を風が通り抜け、梢が揺れていた。昼を過ぎただけなのに日は既に傾きかけていた。そこからは雪道を蹴散らしながら転がるようにして下っていった。


登山道には様々な動物達の足跡がずっと続く



標高1300m付近から月山を望む



1345m地点でラッセルにバテる
雪を解かしラーメンを食べ登頂はあきらめた


すでに積雪が目立つ日暮沢小屋の登山口
ルートは前方の斜面を直登してゆく


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