【平成12年11月6日(月)/八合目駐車場より秋田駒ヶ岳】
昨日までの連休にはたぶん最後の賑わいも見せたであろうこの秋田駒ヶ岳も、さすがに今日はほとんど人がいなかった。めずらしく好天が続いていて、今日も快晴である。登山道はほとんど凍っていたが、朝からの陽射しのために少しぬかるんでいる。標高が上がるに従って眼下には田沢湖も見えてきていた。しかし霞がかかっているせいか遠くの山々はかすんでいてよくわからない。上り詰めたところからは木道が現れ、阿弥陀池と阿弥陀池避難小屋が徐々に近づいてきた。阿弥陀池は半分ほど氷が張っていた。登山者は2〜3人ほどしか見あたらなかった。天気はよいのだがなんとなく寂しい雰囲気である。早速、秋田駒ヶ岳の最高峰である女目岳山頂へ登る。山頂はさすがに風が冷たく、妻はフリースのベストを私はゴアの上着を羽織った。山頂からは阿弥陀池や八合目駐車場の小屋も含めてほとんど見渡すことができる。風さえなければいつまでも山頂で休んでいたいような展望だった。ここで昼食を楽しむことも考えていたが、こう風が強くてはガスコンロはとても使えない状況で、しかたがなく阿弥陀池付近で食べることにした。私は昼食後、前回登っていなかった男岳にひとりで登ってくることにした。下からは人影は見あたらなかったのに男岳山頂に来てみると5人ほど登山者が休憩していた。この山頂からは女岳と火口原がすぐ眼下に見える。登山道がありここから縦走できるのだが、今回は時間がないのでそれは次回の楽しみにしよう。
下山路は阿弥陀小屋の後ろの木道を通って硫黄採掘場を下る周回コースをとることにした。道は往路よりも悪路だったが山道らしい登山道だった。硫黄採掘場付近のすべりやすい砂礫地を慎重に下り、朝通ってきた道と合流すると駒ヶ岳八合目の避難小屋はまもなくだった。
黒湯温泉は湯煙がいたるところからたちのぼり、私たちが遠い昔に忘れてきたような風景が広がっている。そのなかでも杉皮葺きの裸電球の露天風呂はとくに懐かしい思いがした。タオルを携えて目の前の小山を眺めながら湯に浸る。山腹には午後の陽射しが照りつけていた。山肌は葉を落ちつくして寂しいかぎりだが、その中で取り残しのようなイチョウの黄色い葉とナナカマドの赤い実が青空に映えて美しかった。それは冬を目前に控えた山里のつかの間の輝きに見えた。
女目岳山頂で
空は雲一つない快晴だが風はかなり冷たかった