山 行 記 録

【平成12年10月21日(土)〜22日(日)/朝日連峰 ナカツル尾根から大朝日岳】



朝日鉱泉から大朝日岳を望む[2000.10.22 下山後に撮影]



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、避難小屋泊
【山域】朝日連峰
【山名と標高】大朝日岳1,870m、平岩山(ひらいわやま)1,609m、大沢峰1,484m、
       御影森山(みかげもりやま)1,534m、上倉山(かみくらやま)1,144m
【天候】晴れ時々曇り
【温泉】いもがわ温泉(紅葉まつりのために無料)
【行程と参考コースタイム】
[2000.10.21]
朝日鉱泉8:45〜出合10:05〜大朝日岳13:10〜 大朝日小屋13:20
[2000.10.22]
大朝日小屋6:20〜大朝日岳6:40〜平岩山7:30〜大沢峰8:30〜御影森山9:00〜上倉山10:20〜朝日鉱泉11:30

【概要】
[2000.10.21]
ナカツル尾根は朝日川の渓谷道沿いを歩き、尾根の取り付きである二股から一気に山頂まで急登が続く大朝日岳への直登コースである。いま調べてみたら前回このナカツル尾根を登ったのは昨年の7月。また翌日予定している御影森山へは4年ぶりになる。どのコースも何回か歩いているものの、この周回ルートは初めてである。こうしていろいろなルートを組み合わせて周回できるのは飯豊連峰の天狗平登山口と同様に、マイカーを利用する私たちにはたいへんありがたい。10月も下旬に入り、朝日連峰の稜線の紅葉もかなり進んでいるはずでそんなことも今回は楽しみのひとつだった。

朝日鉱泉「ナチュラリストの家」の駐車場は既に満杯のために、狭い道路沿いに無理して留めなければならなかった。登山者カードをみるとこの週末は県外各地からかなり入山している様子だった。「ナチュラリストの家」からは 樹間越しに大朝日岳を真正面に望むことができる。天気予報では昨夜からの雨と前線の通過による影響で午前中は曇り時々雨という予報がでていたのだが、こうして稜線をみると全くピーカンといってもいい空模様である。最近、予報は最高なのに山では期待はずれということが多かっただけにこの予想外の天候には感謝した。


朝日川沿いの渓谷道を歩く。
二股はもうすぐである。

朝日川の二股までは渓谷沿いの道が続く。昨日から朝方まで雨が降り続いたために登山道は濡れており、石の上も滑りやすく気をつけながら進む。この付近は標高550mぐらいだろうか。それでも周囲の樹木はかなり紅葉が進んできているようだ。色鮮やかな樹木に囲まれた朝日川を眺めつつ、清流を聞きながら歩くのはただそれだけで心が洗われるような気持ちになる。まだ9時前だったが二俣近くで登山者がひとり下山してきた。小屋を早朝に出てきたようだった。

二股の標識を見て今日4つ目の吊橋を渡るといよいよ登りにかかる。しばらく息をつく暇もない急登が続いた。きつい登りだが樹間を通る風は涼しく気持ちがいいばかり。また澄みきった青空とところどころに浮かぶ雲はいかにも秋空といった爽やかな天候だった。登山道は落ち葉に埋め尽くされていてさながら枯れ葉の絨毯といったところだ。春や夏山のように周りの高山植物に励まされて登るのもいいものだが、こうして落ち葉を踏みしめながら歩くのも先へ先へと促されるようで心地よいものである。


樹間から小朝日岳を望む(標高約800m付近)


樹林帯がだんだん潅木帯に変わり、ひょっこりと登り切ったところが地図上に記されている名もない1369mのピーク。ここからは大朝日岳がもう目の前に迫る。左には平岩山、右には小朝日岳と展望がひらけるところでもある。時計を見るとちょうど正午。おにぎりをほおばりながら少し休憩した。


1369mのピークから見る大朝日岳



ここから山頂までは見晴らしの良い尾根歩きだが風が非常に強く。山頂近くのヤセ尾根では吹き飛ばされそうになり時々立ち止まらなければならなかった。上空は晴れているものの大朝日岳山頂ではそれまで以上の強風が吹き荒れていた。2本のストックで支えながら両足で踏ん張るがそれでも吹き飛ばされて体がよろける始末。それは危険すら感じるほどですぐに小屋をめざして下らなければならなかった。ちょうど前線が通過しているのかも知れなかった。

小屋に到着してみると昨日から宿泊している先客が一人いるだけだった。私は早速金玉水の水場に水くみに出かける。小屋に戻る頃、稜線を見上げると小朝日岳から登山者がポツリポツリとやってくるのが見えた。そして3時すぎになって登山者が続々と小屋に到着してきた。結局40名前後になったのだろうか。それほどきつくはないがほぼ満員の状態だった。そのなかになんとなく見覚えのある人がいた。声をかけてみると昨年の11月下旬、この大朝日小屋で一緒になったひとだった。長井山岳会の方でその夜はお互いに山の話をしながら夕食を楽しんだ。

今日は、まずお湯を沸かしてコーヒーをいれ、落ち着いたところで遅い昼食に焼きそばを食べる。その後でベーコン入りの野菜炒めを作りながらホットウイスキーを呑み、そして最後はカレーで締めくくった。これが今日のメニューだった。これではなかなか痩せないなあと我ながら思う。

就寝前、外に出てみると風は相変わらずだったが見上げると満天の星空だった。遠くに見える街並みの明かりは山形市や寒河江市なのだろう。周囲が真っ暗なだけに、それはまばゆいほどに輝いて見えた。

[2000.10.22]
朝方、風の音は止んでいたが窓の外は濃いガスのために視界はなかった。朝食を済ませて外に出てみると上空はときどき青空もかいま見え、だんだんと晴れそうな具合だった。今日は久しぶりに御影森山のコースを歩く。数年前に御影森山に向かう途中でみた平岩山の紅葉の美しさが記憶に残っていた。

大朝日岳山頂ではガスが切れるのを待つものの、なかなか晴れてはくれなかった。しかたがなく歩いているうちに晴れることを期待して平岩山に向かって下った。平岩山の西斜面の紅葉はくすんで見えた。よく見るとブナは既に葉を落ち尽くしている。この付近の紅葉はすでに盛りを過ぎているようだ。


平岩山から大朝日岳への縦走路を振り返る



平岩山山頂もやはりガスの中でほとんど視界がなかった。とくにこれから向かう御影森山方向は全く白い闇の中である。北の方は割合ガスが切れてきている様子だが、どうも南や東側はまだ晴れそうもなかった。今日は全国的に移動性高気圧におおわれるので晴れるのは間違いなさそうだったが、いつ晴れるのかわからなくずっとこのまま待つわけにも行かない。御影森山に向かうことにした。この平岩山でいつも思うのだが北大玉山への標識はあるのに御影森山を示す案内がない。ここは牛の背のように広い台地状の山頂になっていて、今日みたいにガスられたらなかなかわからないだろうと思う。

御影森山までは何回ものアップダウンがあって結構汗を絞られた。ガスで先が見えないものだから次のピークこそ御影森山だろう、と思って登るとまた大きく下らなければならなかった。そんなことを何回か繰り返しながら御影森山に着いた。視界は相変わらずでがっかりするばかりだった。平岩山からの区間は祝瓶山を眺めながらの尾根歩きが楽しめる所だけに残念だった。

御影森山を下るとようやく陽射しも差しはじめ、視界が戻ってきた。樹間からは大朝日岳や小朝日岳も望める。太陽の光を浴びてブナやカエデなどの木々の紅葉はまぶしいほどに輝いている。特に上倉山付近では黄緑や黄色のブナの葉が多く、赤色や橙色の鮮やかさも確かに目を奪われる華やかさがあるが、この黄色一色に染まった光景も圧倒されるほどの美しさだった。


上倉山を下ってまもなくの頃



上倉山を下りてもしばらく平坦な歩きが続く。なかなか標高を下げないのだが20分ほどすると一気に樹林帯の急下降が始まる。木の葉越しに朝日鉱泉が遠くに見え隠れするようになり平地がだんだん近づいてくる。やがて沢音が大きくなって吊橋を渡り対岸に移った。まもなくナカツル尾根への登山道と合流すると、今回の山旅のエンディングも近い。

朝日鉱泉に戻ると昨日以上の車が止まっていて驚いた。好天に恵まれたために紅葉狩りのマイカーがどっと繰り出してきたようだった。「ナチュラリストの家」で温泉に入るつもりでいたが、あまり観光客が多すぎるので早々に駐車場を退散した。しかし、途中立ち寄った朝日町の西五十川温泉では「紅葉まつり」の最中で、おかげで無料で入浴させてもらうことができた。


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