山 行 記 録

【平成12年10月16日/飯豊連峰 丸森尾根から頼母木山】



ダケカンバの紅葉が美しい丸森尾根
左奥には玉川と長者原の集落が見える



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】飯豊連峰
【山名と標高】頼母木山(たもぎやま) 1720m
【天候】晴れ時々曇り
【温泉】飯豊山荘(500円)
【行程と参考コースタイム】
飯豊山荘 7:45〜 水場 9:00-9:10〜 丸森峰 10:10-10:20〜地神北峰 10:50〜頼母木山 11:20〜 頼母木小屋(休憩)11:40-13:40〜地神北峰14:10〜丸森峰14:30-14:40〜水場 15:35〜飯豊山荘 17:00

【概要】
飯豊連峰にはちょうど1カ月前にも登っているが、その時はまだ紅葉には早い時期だったために10月に入ってからも何回か紅葉の飯豊に登る機会を伺っていた。しかしなかなか日程が取れない状態が続いているためにしかたなく今回は日帰りで登ることにした。丸森尾根は厳しい登りが連続するコースだが主稜線への最短ルートなので健脚の登山者には梶川尾根と併せてよく日帰りに利用されている。丸森尾根を登るのは4年ぶり。久しぶりに頼母木山まで行くことにした。本当は杁差岳まで足を延ばしたいのだが日帰りではとうてい無理なためにそれは次回に回すことにした

丸森尾根は飯豊山荘前からいきなり尾根の取付きが始まる。岩尾根をぐいぐいと登るとたちまち飯豊山荘や駐車場が眼下となった。普通は標高300mを登るのに1時間が標準とされているがこの尾根は30分ほどで登ってしまう。それほど急な登りが続くところだ。左に梶川尾根、右手に西俣ノ峰の稜線を見ながらの登りが続く。この尾根の急登の厳しさは梶川尾根もそうだがあっけにとられるほどで、全く無駄がないので私の好きな尾根でもある。風もないせいか汗がたちまち吹き出した。拭わずにそのままにしているとボタボタと音をたてて汗が滴り落ちた。登りはじめはブナの葉の黄色が目立ったが登るに従って徐々に様々な色の種類が増していった。その紅葉に彩られた木々の中を登っていると自らその色に染まってしまいそうな錯覚におそわれる。今日は秋の日の陽射しが照りつけて比較的に恵まれた天候だったのだが、扇の地紙付近の稜線は薄黒い雲に覆われていて見えなかった。ブナ林の尾根を登り続けると約1時間ほどで水場に着く。今日のコースで唯一の水場なので水筒に十分に満たした。今日はさすがに平日で他には登山者が見あたらなかった。なおも登り続け潅木が目立つようになった頃、樹林帯を抜け出してひょっこり飛び出したところが丸森峰だ。付近はハイマツの一帯で以前は簡単な標識があったのだがいまは何もない。何もないと単なる稜線上の一角に過ぎなく感じる。ここは遮るものがないので吹き付ける風が冷たかった。ここまではTシャツ一枚で登ってきたがたちまち体が冷え切ってしまい長袖のシャツを羽織った。右奥には杁差岳が遠くに望まれたが、すぐ目前の地神北峰はガスに隠れて見えなかった。ここからは黄葉した草原の中をひたすら登り続ける。この付近は湿地帯で春から夏にかけては高山植物が広がる場所でもある。


なだらかな登山道が続く縦走路(地神北峰付近から)
中央は頼母木山



地神北峰は強風とガスの中だった。分岐に建つ標注も4〜5m離れただけで見えなくなった。また風の冷たさは冬空を思わせるほどで今にも雪が舞ってきそうだった。昼前なのに夕暮れのような暗さである。まっすぐに進めば地神山で右には頼母木山から杁差岳への登山道が続いているはずだった。どうも1700m付近から上に雲が居座っている感じである。少し標高を下げれば視界が戻るはずだと思い、急いで頼母木山に向かって下り始めた。まもなくガスの中から抜け出すと前方に頼母木山へのなだらかな稜線が見えるようになった。一瞬、きれいにガスが切れた頃を見計らって写真を撮る。しかし風は相変わらず強く、寒さに耐えきれず途中からウインドブレーカーを着込んだ。振り返れば地神山はガスのために全く見えなかった。

頼母木小屋は誰も居なくてひっそりとしていた。水場はすでに止めてあるらしく水滴が滴り落ちる程度しか出ていなかった。頼母木山から下ってくる間に陽射しが少し戻ってきていたのだが、風の冷たさは相変わらずで小屋に入って休憩することにした。小屋の中に入るとさすがにほっとした。急いでお湯を沸かしてとりあえずコーヒーを淹れた。冷え切っていた体が一瞬温まったが、体の震えはなかなか止まらなかった。少し落ちついたところでラーメンを作る。いろんな食材は持ってきていたのだがやはり温かいものが一番のごちそうだった。今日は玉子や野菜をいれた豪華版である。缶ビールもザックに入れてきたがとても飲む心境ではなかった。今日は水筒の水もほとんど減らなかった。食後は天候が晴れるのを待つ間、しばらく横になり文庫本を読む。そのうちにうとうとし始めたのだが寒くて目が覚めた。外に出てみると風の冷たさは変わりがなく地神山や地神北峰付近の稜線もまだ雲の中だった。依然として強風とガスが吹き荒れているようだった。

小屋の周辺にしばらくぶりに太陽光線が降り注ぎ、付近に明るさがもどる。強い陽射しが体に当たると生き返るような思いがした。頼母木小屋の正面には紅葉に彩られた西俣ノ峰からの斜面が広がっていて、さながら絨毯を敷き詰めたような美しさだった。


頼母木山から見る頼母木小屋(右は大石山)


頼母木小屋の前からみる紅葉に彩られた西俣ノ峰からの斜面
さながら絨毯を敷き詰めたような斜面が広がっている



下山を決めると周りの峰峰に別れを告げた。そしてもときた道を忠実に戻った。地神北峰付近の天候は午前中と変わりがなかった。濃いガスと強風は地神山から吹き下ろしてくるようだった。登山道は迷いようがない一本道なので不安は全くなかったが、往路にも増して薄暗くまるで日が落ちたかのようだった。丸森峰からの下山路は紅葉を惜しみながらの下りだった。いつもだと下山路はただ黙々と半ば義務的に下る場合が多いのだが、今日は本当に惜しみ惜しみ時間をかけて下った。途中しばらく立ち止まっては、文覚沢を落ちる滝などを飽かずに眺めていた。水場付近まで下りてきた頃にはだいぶ疲れもたまってきたために早く下ってしまいたいと思う一方で、今日はこの状況から去るのが切なくなってきてしょうがなかった。つかの間の紅葉の輝きは近づく冬と紙一重ということで感傷的になっているのかもしれなかった。飯豊山荘に下りる頃は既に日は暮れており、ヘッドランプが必要なほど暗くなっていた。


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