山 行 記 録

【平成12年9月2日(土)/二口温泉から大東岳】



下山してまもなくの頃。九合目。
ブナ林に降り注ぐ木漏れ日が美しかった。



【メンバー】2名
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】奥羽山脈中部
【山名と標高】大東岳1366m
【天候】曇り時々雨
【行程と参考コースタイム】9:30 二口温泉〜11:10 五合目〜12:40-13:40 大東岳〜16:40 二口温泉
【温泉】二口温泉「磐司山荘」600円

【概要】
二口渓谷の最奥の山、大東岳は二口山塊の主峰として知られており、以前から仙台市の岳人のホームグランドとして人気の高い山とも聞いていた。雁戸山や蔵王の名号峰の山頂からもその勇姿は常に眺めることができ、どっしりとした重量感のある山容は登高意欲をかきたてられるものである。

今日は台風から変わった低気圧が日本海から太平洋側に通過する予定で、山形県は全県下で雨模様の予報が出ている。このため以前から気になっていた宮城県の大東岳に向かうことにした。大東岳は標高は大したことはないのだが登りの標高差が約1,000メートルほどあり、これは長井市の祝瓶山よりもあるのである。おのずと気を引き締めて登ることになった。今日はしばらくぶりでカミさんとの山行である。

二口温泉のバス停から車道を少し進むと大東岳の案内板があり7〜8台駐車できるスペースがあった。まっすぐの道は山寺へと続く二口林道だが現在は通行止めになっている。今日は土曜日なのに車は5台しかとまっていない。溢れるほどの車を予想していただけに拍子抜けしてしまった。やはり台風の影響なのだろうか。自宅を出る時間も遅かったために登山者の姿は他に見られなかった。

準備を終えて杉林の中を沢沿いに歩き始めた。しばらくして一合目を示すずいぶんとりっぱな石造りの標識が登山道の傍らにありびっくりする。御影石でもあるのだろうか。それは九合目まで同じように続いている。杉木立で陽射しが届かないせいもあったのだがあたりは夕暮れのように薄暗かった。二合目に向かっている途中でますます暗さが増してきたと思うまもなく雨が降り出してきた。後ろを振り向けば空は明るいのだが稜線方向は真っ暗だった。やはり日本海側は天候が悪いようだ。ちょうど沢沿いを歩いているときで木立の下でしばらく雨宿りをしなければならなかった。雨の状況では山行を途中で取りやめることも考えていたが、小やみになったのを見計らい再び登り始めた。三合目近くからは周りは雑木林となりブナが多く目立ち始める。カミさんは久しぶりの登りがつらいのか、どうしても遅れがちになった。ゆっくりゆっくりと歩くが一合目毎に休憩をとる。雨は止んでいたものの風は異様に強く吹いていた。厚い雲が上空を覆ったと思うとまた少し陽射しが戻ったりする。ちょうど低気圧が通過しているらしかった。気温は思いの外高く汗は止めどなく流れるが、風があるのでむしろ爽やかささえ感じるほどだった。

立石沢を横切ると沢から離れてゆくようになり、少し急な坂をジグザグに登ると見晴らしの良い尾根道に飛び出した。五合目である。ここは船形山の展望台とあったが木の葉越しにみるそれは山形県側からみる形とはずいぶん違うように感じた。五合目からしばらく登り続けると1023mを示す標識があるピークに着く。前方に大東岳を望むことができるところだ。ここからはしばらく平坦な道が続いた。途中にはこぶし平の標識がたっていた。少しずつ高度計は高さを増し、八合目からはいよいよ急な登りが始まる。ハナコスリと呼ばれるところで最後のがんばりどころでもある。カミさんは時々立ち止まりながら呼吸を整えている。やがて勾配が緩やかになると山頂まで200メートルの標識が立っていて励まされるものの、この平坦な道はなかなか山頂につかなくて距離が間違っているのでは、とカミさんがしきりにぼやく。確かに300〜400mはありそうな感じだった。ずっと樹林帯が続いていたがやっと潅木帯となり見晴らしが利くようになっていた。

山頂は意外と広く真ん中には方位や山の位置を示す石盤のようなものが設置されている。かたわらでは先客が2名休んでいた。我々も早速食事の準備を始めた。空には青空が戻ってきていたが強風は相変わらずで砂あらしが時々吹き荒れるほどだった。食事の後はしばらく展望を楽しむ。船形連峰、蔵王連峰、近くには面白山などはもちろん、右手を見れば仙台市の街並みまで望めた。

下山は樋ノ沢コースをとって周回する予定だったのだが、カミさんが足の疲れを訴えていることと時間が遅くなっていたこともあって、登ってきた表コースを戻ることにした。
樹林帯まで下ると強風も和らいでほっとする。風は台風を感じさせるほど激しいものも時々吹き荒れていた。九合目付近を過ぎるとブナ林の木の葉越しに降り注ぐ陽射しがキラキラと輝いていて、もう秋の雰囲気が漂っていた。快調に下っていたのだが途中でカミさんが膝の痛みを訴えるのでそれからは足をかばうようにしながらゆっくりゆっくりと下ることにした。

駐車場に戻ると既に車は我々の一台だけになっていた。思いの外疲れていた我々はザックを車に積み込み、さっそく二口温泉に入り疲れをとることにした。すぐ近くの「磐司山荘」は小高い丘に建っている旅館で駐車場にはかなりの台数の車があった。今日は宿泊する人も多いらしく既に浴衣姿でのんびり散策している人も目立った。風呂上がりに玄関で休んでいると、山荘では宿泊者の夕食の準備を始めたらしくまわりに料理の香りが漂ってきて、このまま泊まって行きたい誘惑にかられてしまった。


やっと青空も見え始めた大東岳山頂。
台風から変わった低気圧が上空を通過しており、
強風のため砂ぼこりが舞い上がっている。


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