山 行 記 録

【平成12年8月27日(日)〜28日(月)/秋田駒ヶ岳から乳頭山縦走】



秋田駒ヶ岳(女目岳)と阿弥陀池避難小屋[2000.8.27撮影]



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、下山後、黒湯温泉に素泊まり泊(山行は日帰り)
【山名と標高】秋田駒ヶ岳(女目岳・1637.4m)、横岳1583.0m、湯森山1471.7m、笊森山1541.0m、乳頭山1477.5m
【天候】晴れ
【行程と参考コースタイム】
8月27日 2:00自宅発=(R287,R347,R13,R46経由)=6:30田沢湖高原駐車場着(自宅から245km)
温泉高原駅発 7:05=(バス)=7:25 秋田駒ヶ岳八合目着

7:30 秋田駒ヶ岳八合目〜8:30 女目岳〜9:20 横岳〜10:10-25 湯森山〜11:30 笊森山〜11:55-12:25 千沼ケ原〜13:10 乳頭山〜13:40 田代岱山荘〜13:45 田代岱分岐〜14:40 孫六温泉登山口〜15:00 乳頭温泉郷バス停

乳頭温泉郷バス停=(バス)=田沢湖高原駐車場に戻り黒湯駐車場(黒湯温泉泊)

【概要】
花の名山で有名な秋田駒ヶ岳には八合目から登ればすぐなのだが、山頂へのピストンだけではなんとなく物足りなさそうで乳頭山まで縦走することにした。長井市からだとかなり時間がかかるので前日に乳頭温泉郷に泊まることも考えたが、やはり下山後にゆっくりと温泉に浸りたいので前日黒湯温泉に予約をして朝早く出発することにした。最近、体力的にきつい登りが続いていたので久しぶりにのんびりとした山旅が恋しくなっていた。
秋田駒ヶ岳から湯森山、笊森山、乳頭山とたどる縦走コースはそれほどの上り下りもなくなだらかな起伏が続く稜線歩きが楽しめる。また笊森山から乳頭山へ向かう途中には千沼ヶ原という美しい高層湿原を見ることができる。高山植物が豊富なこの山もこの時期ではだいぶ少なくなっていたが、この千沼ヶ原があるおかげでたいへん充実した縦走をすることができた。

未明に自宅を出発して国道をひた走る。雄勝峠を越えてしばらくすると東の空がほんのりと薄明るくなってきた。R287,R347,R13, と北上し角館町からはR46に入る。長い道中だったが夜の街道は車の量がほとんどなくて予定していたより早めに田沢湖高原温泉郷に着いた。最初は駒ヶ岳八合目に車をおき、乳頭山から下山後に車を回収するつもりで向かったが、途中で通行規制がされていて先に進めなかった。しょうがないので高原温泉駐車場に車をおき、バスで駒ヶ岳八合目に行くことにした。しかし車の回収の際はこのほうが結局バスの乗り継ぎの時間が省けるようだった。少しの時間を利用して駐車場でお湯を沸かしテルモスに詰めてからバスに乗る。

登山口には時間がまだ早いせいか登山者はまばらだった。八合目小屋の正面から登山道が伸びていた。コンクリートの橋を渡ってだんだん標高をあげてゆく。花の時期は終わったとはいえ斜面にはまだ様々な草花が残っていて登山道に彩りを添えている。赤土の展望台を過ぎるとまもなく木道の先に阿弥陀池と避難小屋が見えてきた。ちょうど山のピークの間にコース続いており右にそびえるのが男岳らしかった。地図を確認してから左にそびえる秋田駒ヶ岳(女目岳)に向かう。阿弥陀池のほとりの木道では登山者が何人か休憩していた。池を眺めながら朝食でも食べているのかのんびりとした雰囲気だ。山頂からはさすがに展望がよかった。目の前の男岳はもちろんこれから向かう湯森山、笊森山の稜線も見渡すことができた。見下ろせば避難小屋と阿弥陀池が美しく絵になる風景だった。上空はうろこ雲が広がり涼しい風も流れていてすっかり秋の風情が漂っていた。

山頂から下って避難小屋に戻り阿弥陀池近くの木道で腰を下ろして少し休憩した。果物などを食べて乾いた喉を潤す。
そこからはわずかな登りで稜線に上がり横岳から乳頭山への縦走路に進む。この頃からガスが流れてきて陽射しがとぎれたが、その分涼しい中を歩くことができた。ゆるやかに伸びる稜線を進むと湯森山である。山頂では夫婦らしい登山者が2名休んでいる。行動食を食べていると笊森山方面から6名ほどのグループが登ってきたがほとんど立ち止まらずに通過していった。この付近で出会った人はこの人たちだけだった。今日は日曜でもう少し多くの登山者で混み合うかと思っていたら意外に少なくて拍子抜けするほどだった。秋田駒ヶ岳へ往復する人は多いかもしれないが縦走する人はそれほどでもないのかも知れなかった。

湯森山から少し下ると前方に平坦な湿原を見下ろすことができる。その中を登山道が白く笊森山まで続いていた。池塘と湿原が広がる熊見平のようだった。途中、宿岩とよばれる巨岩を卷いてからしばらく登ると笊森山の山頂だった。上り下りの標高差はあまりないのだが時間は予想よりかかっている。距離が思っていた以上に長いようだった。振り返れば先ほどの湯森山が背後にそびえ、秋田駒ヶ岳はすでにはるかかなたに遠のいてしまっている。昼近くになり腹も空いてきていたが、千沼ヶ原まではもう少しなのでがまんすることにした。山頂から少し下ると分岐があり右が千沼ヶ原へのコースだった。滑り止めのために切り込みの入った木道を下る。オオシラビソの樹林帯を抜けるとまもなく三叉路があり目の前が千沼ヶ原だった。湿原には少し前までは高山植物であふれていたはずだったが、あいにく花の時期は過ぎてしまっていた。しかし大小の池塘が広がるこの高層湿原は美しく見とれてしまうほどである。木道に腰をおろしてしばらく昼食をとった。人もいないだけに静かな湿原でのんびりとすることができた。

湿原の入口の三叉路に戻りそのまま直進して乳頭山へ向かう。林を抜けると沢を何カ所か渡って本来の縦走路に合流するようだった。沢の斜面にはニッコウキスゲ、ヨツバシオガマなどがまだ咲いていた。少しの上り下りのあと岩稜帯を登る。乳頭山までは少し急な登りが続くところで、陽射しも戻ってきたために汗が吹き出してきた。山頂の近くには滝ノ上温泉への分岐があった。道は右手に続いていたが、登山道が崩壊しているために通行禁止の立て札がたててある。転落防止のロープに沿って岩場を登るとまもなく乳頭山の山頂だった。

乳頭山は秋田県側の呼び名で岩手県側では烏帽子岳と呼ばれている山である。それぞれに山を眺めたときの姿形からつけられたようである。乳頭といわれるだけあって山頂は突起状の岩稜帯で東側は絶壁になっている。ここまではほとんど登山者に会わなかったが、この乳頭山の山頂は多くの登山者で賑わっていた。みな乳頭温泉から日帰りで往復するようであった。秋田駒ヶ岳や今日歩いてきた縦走路も含めて山頂からは360度の展望が広がり眺めていて飽きない光景だった。眼下に田代岱山荘が樹林帯のなかにポツンとたたずんでいるのが印象的だった。下山をはじめてまもなく黒湯温泉への分岐があるが左に見送りなおも下ると、さきほど山頂からみえた田代岱山荘が樹林のなかから現れる。木造の立派な小屋であった。ザックを小屋の入口に置いて付近を散策している人も何人かいるようだった。木道をそのまま進み5分ほどで孫六温泉への分岐だ。そこからはかなり歩かれたようなしっかりした登山道が続いていた。疲れた体を励ましながらひたすら下る。黒湯温泉の建物がブナ林の樹幹越しに見え始めるとやがて孫六温泉登山口である。分岐から約1時間だった。

孫六温泉登山口から左は黒湯温泉で右には大釜温泉への道が続いている。最近整備されような比較的新しい歩道を沢沿いに進み、舗装路に出るとやがて乳頭温泉のバス停だった。高原温泉駐車場に戻って車を回収し、バスで来た道をまた乳頭温泉に引き返す。
黒湯の駐車場は満車状態で日帰りの入浴客も多いようだった。黒湯温泉に素泊まりで宿泊を申し込む。自炊の建物は古く、部屋も裸電灯があるだけだった。シュラフに包まれていると山小屋と変わりがなくかえって落ちつくことができた。私は翌朝も薄暗いうちから露天風呂に入り、のんびりと温泉三昧を楽しんだ。


ミヤマリンドウ(笊森山付近で)[2000.8.27撮影]


笊森山と三角山の鞍部に広がる千沼ケ原
この美しい池塘群はずっと右手にも続いている広大な高層湿原である。
[2000.8.27撮影]


登山者でにぎわう乳頭山山頂[2000.8.27撮影]


硫黄の煙がたなびく黒湯温泉[2000.8.28撮影]


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