山 行 記 録

【平成12年7月1日〜2日/朝日連峰 日暮沢から竜門岳】



急斜面の雪渓を下る(清太岩山からの下りで)
[2000.7.2撮影]



【メンバー】友人(6名)
【山行形態】夏山装備、避難小屋泊(竜門小屋)
【山域】朝日連峰
【山名と標高】清太岩山1,465m、ユーフン山1,565m、竜門山1,688m、
【天候】1日(雨)、2日(曇り後晴れ)
【温泉】山形県大江町 柳川温泉 300円
【行程と参考コースタイム】
[2000.7.1] 日暮沢小屋 7:20(620m)〜清太岩山 11:00(1465m)〜ユーフン 11:50(1565m)〜竜門山 12:40(1688m)〜竜門小屋 12:50(泊)

[2000.7.2] 竜門小屋 7:00〜日暮沢小屋 11:15

【概要】
この日暮沢小屋から竜門山〜大朝日岳〜小朝日岳〜ハナヌキ峰とたどる周回コースは縦走気分も味わえるために、マイカーを利用する多くの登山者に人気があるコースだ。我々も竜門山から大朝日岳を巡る予定だったのだが、2日間とも雨と強風と濃霧という最悪の天候のために竜門小屋までの往復という行程に変更を余儀なくされてしまった。

当初の我々の山の会の計画では、5月か6月上旬の春山を予定していた。しかし各人の都合がつかなくて延び延びとなってしまい、結局7月になってしまった。今では周囲はどこを見回しても夏山の雰囲気である。春の少し柔らかい雪原や雪渓歩きが楽しみだったのだが、残雪は確かに多いものの、すでに雪の状態は5月頃とは比較にならないほど堅く締まっており、キックステップだけでは難しい時期になっている。

このところ週末毎に天候が崩れていたが今日も朝から芳しくない空模様だった。日暮沢小屋で準備をしていると小雨が降りだしてきて、その後も時々強く降るような具合で、雨具を着たり脱いだりしながらの行動がずっと続いた。例年のように朝日連峰の残雪歩きを楽しみにしていたのだが、登山道はすでにほとんど夏道だった。時々、左手には樹幹越しに古寺山から小朝日岳が見えたが、熊越しから大朝日岳への稜線は厚い雲に覆われていて見えなかった。次第に標高が高くなり息づかいも荒くなるころになって、ようやく清太岩山手前の急斜面付近から雪渓が現れる。アイゼンをつけるかどうか迷ったが、2本のストックをたよりにステップを切りながら登った。登り切った所は高台のような雪原になっていて、いつもなら振り返れば後ろにぽっかりと月山が浮かんで見えるところなのだが、今日はあいにく雲の中に隠れている。そこからは割合に平坦な潅木帯で、しばらくすると再び清太岩山への急な登りになる。

樹林帯が切れた頃から雨混じりの冷たい風が耐えず吹き付けていた。清太岩山の山頂からは360度の展望が楽しみなところだが強い雨風のために立ち止まらずに通過した。付近はハイマツの尾根道になっておりしばらくアップダウンを繰り返す。ユーフンの山頂から竜門山の稜線はヒメサユリとアズマシャクナゲが満開だった。みんな、今日は天候の悪さばかりに気持ちが傾いていたが、考えてみれば今の朝日連峰は様々な高山植物を楽しめる時期なのだった。

雨は相変わらず降り続いており、竜門山が近付くにつれて雨足がさらに強くなってきた。またこの頃になると濃霧も加わり我々は雲の中に入ったようだった。竜門山直下の急斜面はまだ厚い積雪に覆われている。慎重に堅い雪渓を登り詰めて竜門山の山頂に到着した。視界がないうえに風雨も激しさを増してきたため、大朝日岳へ向かうのはあきらめてそのまま竜門小屋に下る。かたわらではシラネアオイ、ハクサンイチゲが風雨に晒されながらジッと耐えているようだった。

竜門小屋に到着するころは体中はすっかり濡れてしまい靴の中にも雨水が浸透していた。こうなるとゴアテックスの雨具も登山靴も役に立たないようだった。着替えが済んだところで遅い昼食を始める。その後は皆、悪天候の中の歩き通しで疲れ切ったのかシュラフを出してしばらく眠った。夜は翌日の好天を祈りながら皆で乾杯しての夕食。この日、小屋には我々も含めて14人〜15人ぐらい泊まったのだろうか。聞いてみると皆、我々と同じように日暮沢から大朝日岳に向かう予定だったものの、悪天のためにこの小屋に逃げ込んできたようだった。

一晩中強風が耐えず、小屋を揺るがした。ここは風の通り道なのか、動物のようなうなり声が夜通し小屋中に響きわたった。天候が良ければ4時出発としていたので、3時半頃シュラフを抜け出して窓から外を覗いてみる。すると雨は止んでいたものの、一面ガスが立ちこめて視界は全くといっていいほどなかった。がっかりしてまたシュラフに潜り込む。他の人も何人か外に出て様子を伺っているようだった。結局、この天候では無理に大朝日岳に向かっても何の楽しみもないうえに、また遭難する恐れもあることからこのまま下ることにした。6時近くになってやっと全員が起き出して朝食の準備を始めた。小屋に同宿した人達も皆下山するようだった。

竜門山山頂からの下りの雪渓で小屋を早めに出た人達が、方角を失ったのか道に迷っていた。夏道をやっと見つけたらしく大声で仲間を呼び合っている。晴れていれば何ということもない場所だったが、私たちの周りは真っ白でほとんど見えなかった。清太岩山付近まで下るとようやく雲から抜け出し視界が広がった。日差しが戻ると気温は思いの外高く、所々には青空も見えて下界は夏日のように思われた。しかし振り返れば朝日の稜線はあいかわらず黒い雲に覆われていた。竜門山の往復とはいえ標高差は1000m以上あり、また悪天の中を歩き続けたことから日暮沢小屋に着いたときには着替えをするのが大儀なほど疲れていた。帰りは大江町の柳川温泉と柳川ソバで2日間の山行を締め括った。


濃霧の中の竜門小屋
風も強く霧が勢いよく流れている
[2000.7.2撮影]


清太岩山(ユーフンからの下り)
やっと雲の中から抜け出たところ
[2000.7.2撮影]


清太岩山近くから大井沢を俯瞰する
ここから急斜面の雪渓を下る
晴れていれば月山が正面にぽっかりと浮かんで見えるところだが...
[2000.7.2撮影]


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