山 行 記 録

【平成12年6月25日/朝日連峰 鈴振り尾根から祝瓶山へ】



右奥ピークが大朝日岳、左へ中岳、西朝日岳
(標高1000m付近から)



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、日帰り
【山域】朝日連峰
【山名と標高】祝瓶山 1,417m
【天候】曇りのち晴れ
【温泉】西置賜郡小国町五味沢 白い森交流センター「りふれ」500円
【行程と参考コースタイム】
大石橋8:15−−−祝瓶山10:45〜11:30−−−大石橋13:30

【概要】
今週末は梅雨前線の影響で雨模様の天候が続いており、今日も雨の中の歩きを覚悟して自宅を出た。しかし宇津トンネルを抜けると心なしか青空も垣間見える。そして五味沢を通り過ぎる頃は日差しが差し始め、塞いでいた気持ちが晴れてくるようだった。とはいえ新潟側はなんとか晴れているものの、祝瓶山の方を見上げればまだ山頂付近は厚い雲に覆われている。

大石橋の駐車場はちょうど1台分だけのスペースが空いていた。停めてある車は皆県外ナンバーである。出発する前に登山届けをのぞいてみると今日は新潟のグループが一団体登っているだけのようだった。他の車はみな釣りが目的のようである。大石橋の吊橋から荒川の源流を眺めると、青空と新緑が水面に映っていて一幅の絵を見ているようだった。聞こえるのは荒川の清流の音と、ヒグラシやカエルのうるさいほどの鳴き声だけである。釣り人は付近に見あたらなかったがこんなところでのんびりと釣りも悪くないなあ、と澄み渡る風景に少し立ち止まった。


大石橋の吊橋から見る荒川源流

カクナラ小屋への分岐から右の山道に入ってゆく。見上げると木漏れ日とともにブナの新緑が降り注ぐ。さながら緑のシャワーのようだ。この鈴振尾根コースは長井の桑住平のコースよりも距離が長いので登りは一見きつくはなさそうだが、標高差は小国側からの方が150mほど多いのだ。登り始めるとすぐに汗が噴き出してきた。しかし、下界の垢が流れ落ちるようで気持ちがいいのも事実。さわやかな風が吹いていて快適な登りが続く。標高1100m付近から雲の中に入ったらしく、たちまち視界がなくなった。道ははっきりしているので心配はないががっかりである。しかし今日は雨が降らないだけで天候に感謝しなければならないのだろう。雪は北側の斜面に少し残っているだけで登山道には全くなかった。樹林帯を過ぎ潅木帯までくると道の両側にはウラジロヨウラクが可憐な花をびっしりとつけている。また大岩からの稜線上からはヒメサユリが盛りでイワカガミ、マイズルソウ、ゴゼンタチバナも多く、うっとりと見とれながら歩いた。


登山道の両側にたくさんのヒメサユリが見られる
標高1300m付近


花がびっしりのウラジロヨウラク

視界の全くないままに山頂に到着する。二つのグループが休憩中で、そのうちの一つは長井側から登ってきたようだった。皆、かなり早く着いたのか車座になりながら話に盛り上がっている。強い風とともに濃いガスが流れていてまつげなどが濡れてくる。ウインドブレーカーを羽織って腰を下ろした。正面には大朝日岳が見えるはずだったが真っ白でなにも見えない。天候は回復傾向なのでもしかしたら晴れるかもしれないなあ、と昼食をしながら少し待ってみることにした。メニューはおにぎりにミニカップメンと果物。そして寒いので食後に熱いコーヒーを淹れた。気温はそれほど低くはないのかもしれないが、風が強いせいで体感温度はかなり低く体が急激に冷えてきてがたがた震えるほどだった。山頂からの眺望を楽しみにしていたが、上空を見上げても日差しは全く望めそうもないので早めに下山することにした。晴れていれば朝日連峰はもちろんのこと、飯豊や吾妻連峰、また日本海まで見渡すことができるのにと残念だった。一団体は少し前に赤鼻尾根経由で祝瓶山荘に下っていった。もう一つのグループは晴れるまでもう少し待つような様子である。

相変わらず何も見えない中を黙々と下っていた。そして大岩付近まできたところで、一瞬雲が切れて太陽が顔を出した。するとまるで劇場の緞帳が開くかのように展望が一気に開けてしばし感動する。小国町の針生平や岩壁を見せる正面の巣戸々山なども美しく、しばらく見とれていた。しかし晴れ渡ったとはいえ、祝瓶山にはまだ厚い雲がかかっていて山頂は変わりがないようだった。そこからは少しずつ雲が切れだした大朝日岳を右手に眺めながら下る。冷えた体もいつのまにか汗をかくほどにまでなっていた。日差しが戻り爽やかな風も吹き渡る尾根道は、さきほどの山頂の状態を忘れさせた。風の音と小鳥のさえずりが聞こえる中、ときどき写真を撮るために立ち止まったりしながらのんびりと初夏の祝瓶山の下山路を楽しんだ。


祝瓶山はまだ雲の中
左のピークは大岩付近


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