山 行 記 録

【平成12年6月10日〜11日/五段山から飯豊連峰】



昨年新しく改築された大日杉小屋[2000.6.11撮影]



【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、避難小屋泊(切合小屋)
【山域】飯豊連峰
【山名と標高】地蔵岳1538.9m、三国岳1,644m、種蒔山1,791m、地蔵山1485m、牛ケ岩山1401m、五段山1,312m  
【天候】10日(曇りのち雨)、11日(雨)
【温泉】西置賜郡飯豊町「フォレストいいで」300円
【行程と参考コースタイム】
(10日)7:00 大日杉(610m)〜9:00 五段山(1312m)〜10:35 牛ケ岩山(1402m)〜10:25 地蔵山(1485m)〜11:15-11:35 三国岳(1644m)〜種蒔山(1791m)〜13:00 切合小屋(1745m)(泊)

(11日)6:00 切合小屋(1745m)〜7:35 地蔵岳(1539m)〜8:25-8:30 長之助清水(990m)〜8:50 大日杉(610m)

【概要】
今年はじめての飯豊連峰なのに、梅雨前線が本州南岸に停滞していて今日は朝から天候はあまり芳しくなかった。上空を見渡すと薄黒い雲が空一面を覆っていて、やがて五段山を過ぎるあたりから雨が降りだした。その上濃いガスのために視界が全くない状態が切合小屋まで続き、コンパスと以前の記憶だけを頼りに歩くはめになってしまった。

五段山から飯豊連峰へは昨年、同コースを日帰りで歩いている。今回は小屋泊りなので気分的にはすごく楽である。天候次第で本山小屋まで足を延ばす予定で出発し、最悪、切合小屋泊でも翌日飯豊本山へのピストンぐらいは可能だろうと思っていたのだが、結局翌日も雨が止まなくてそれも断念した。しかし五段山から牛ケ岩山、地蔵山、三国岳と周回するこのコースは切合小屋を往復するしかなかった以前の山行に比べて、歩く距離が長い上に縦走気分も味わえて、充実感は全然違うものがある。



[2000.6.10]

6:00 自宅出発

7:00 大日杉(610m)
駐車場には何台もの車が留まってあり、小屋前には大勢の登山者が準備をしている。小屋では明かりを灯していて、煙が立ちのぼっていた。
大日杉小屋はまだ使用できないと聞いていたがもう大丈夫なのだろうか。小屋前を通り過ぎ白川源流に架かる吊橋を渡る。最初から急登が続くが久しぶりの登山道が懐かしい。歩いているとクモの巣が腕や顔にまとわりついた。今日はこのコースをまだ誰も歩いていないようである。標高、1200m付近からときどき残雪が現れる。先ほどまでなんとか視界があったのだがこの頃からガスに包まれ始め、周辺の景色が見えなくなった。

9:00 五段山(1312m)
山頂全体に残雪があり標識は雪の下である。昨年はここから牛ケ岩山や飯豊の主稜線が眺められたのだが今日は視界が10〜15m程度しかなく周囲は真っ白である。引き返すかどうか少し逡巡するものの行けるところまで行ってみることにした。踏跡はまったくなかった。

10:35 牛ケ岩山(1402m)
五段山からは昨年より夏道が少し多いとはいえ全体にまだまだ残雪が多かった。ずっと霧雨が降り続いていたのだが、だんだん雨粒が大きくなってきたため雨具の上着を羽織る。尾根上の道とはいえこの付近はほとんど平坦な雪原のためにガスに卷かれると本当に怖い。常にコンパスで方角を確認しながらの行動が続いた。また引き返す際、迷いそうな箇所には木の枝を立てながら歩く。それでも数メートル歩くとそれも全く見えなくなった。湿地帯の牛ケ岩山山頂付近は夏道がでていたが、そこを過ぎるとまた残雪が続く。そこからはほとんど視界のない中の雪原の歩きだった。天候さえよければ飯豊の主稜線を常に眺めながらの稜線漫歩を楽しめるのだが今日は乳白色のまっただなかだ。コンパスを西南西に合わせる。


10:25 地蔵山(1485m)
山頂直前は少し夏道が出ていたが、辺りはほとんどまだ厚い雪に覆われている。少し方角を右に取り三国岳をめざす。この付近は川入りからのコースと合流するところだ。昨年は広い雪原の中に赤旗の標識が立っていて分岐点がはっきりしていたが今回はそれもない。相変わらず何も見えない状態が続いていたが、ここから比較的新しい踏跡が続いていた。1人だけのようだったが川入りからの登山者のものらしかった。ここから三国岳へは岩場が続くため今までのように方角を見失うような場所はないはずだったが、それでもこのホワイトアウトの状態で踏跡があるというのは心強かった。途中の剣ガ峰の岩場は濡れていることもあって慎重に通過した。細かい雨が相変わらず降り続いている。


ムラサキヤシオツツジ(七森付近で)

11:15-11:35 三国岳(1644m)
小屋には誰も居なくひっそりとしていた。ここからは大日岳の眺めが良く楽しみにしてきたのだが、今日は全くそれもかなわない。軽く昼食をしてから出発した。この区間は夏道と残雪が交互に現れる。この辺はそれほど迷うような箇所はない。七森を過ぎた辺りで登山者が1人下ってきた。話を聞くと踏跡の主だった。泊まる予定で登ってきたのだが、明日も天候は悪そうだからと切合小屋で引き返してきたらしかった。


シラネアオイ(七森付近で)

12:40 種蒔山(1791m)
踏跡をたどりながら雪原を歩いているといつのまにか種蒔山のピークにでて立ち止まる。周りは笹ヤブで夏道はなかった。このピークは東側を卷かなければならなかったが、先人も誤ってしまったようだった。引き返しても良かったのだが、ピークの笹ヤブを越えれば本来の雪渓に出ることが出来そうで、方角ははっきりしているのでそのまま笹ヤブを漕ぐ。しかし横着をして雨具のパンツをはかなかったためにズボンがずぶぬれになってしまった。小屋が近くなったところで雨足が強くなった。

13:00 切合小屋(1745m)(泊)
小屋には誰も居ない。2階に上がっていつもの場所にザックをおいた。濡れたものを着替えると体が暖まった。全身びしょぬれだったために体はかなり冷えていたようだ。水はペットボトルにも持ってきていたが足りないので、コーヒーを淹れ、落ちついてから水作りのための雪掘りにでかけた。その後は夕食まで文庫本を読んでのんびりと過ごす。雨の中の歩きは心が塞ぐのだが、小屋の中で雨音を聞きながら過ごす時間は心が落ちついてなかなかいいものである。


なかなかピークをみせない大日岳(切合小屋から)

夕方になり単独1名と5人のグループが到着してとたんににぎやかにる。皆、川入から登ってきたようだ。また、この頃ガスがようやく晴れだしてきて周りの山並みが見えるようになった。小屋の近くのピークにのぼり、写真を撮る。視界がはっきりするとあらためて残雪の多さを確認することができた。しかし、大日岳や草履塚付近はガスが晴れそうでなかなか晴れなかった。



小屋の中での夕食風景


[2000.6.11]
4:30 起床
夜半から強い雨が降り続いていて小屋の屋根を叩いていた。朝になると雨は少し弱まったが、それでもなかなか止みそうもなかった。シュラフにもぐりながら卵スープを作り、様子をみるとこにした。小さな窓から外を覗いて見るとまたガスが張り出していて視界がなかった。


6:00 切合小屋(1745m)
相変わらず小雨混じりが続いていたが、種蒔山付近はだいぶ視界がはっきりしてきていた。しかし、天候はどうにも望めそうもなくこのまま下山することにした。小屋をでてすぐにいつもの御沢の雪渓を下る。今回はピッケルもアイゼンも持たなかったので両ストックを使い慎重に最初の急斜面を下る。


御沢の雪渓を下る(左奥は地蔵岳)


6:25 御沢別れ通過
ここからは夏道が出ていて、なだらかな稜線をたどると間もなく御坪にでる。ここのダケカンバは飯豊でも絶景の箇所。まだニッコウキスゲなどは早かったがカタクリやシラネアオイ、ムラサキヤシオツツジが美しくまさしく雲上の庭園である。またこの御坪は飯豊本山や草履塚のよい展望台でもある。


御坪から見る飯豊本山

7:35 地蔵岳(1539m)
地蔵岳手前で大勢の団体がテントの撤収中だった。昨日の朝、大日杉小屋でみかけた団体らしかったが、こんな場所で幕営しているところを見ると最初からここまでが目的なのかも知れなかった。ここからは途中に残雪は少し残っているものの、ほとんど夏道が続く。細い雨が降り続いていて、ほとんど休憩もなしに下り続ける。

8:25-8:30 長之助清水(990m)
この飯豊山の伏流水は、大日杉に下る時にはいつも最後の楽しみにしている場所だ。今回も自宅に持ち帰ることにしてペットボトルに詰めた。緩やかな尾根をひと下りして、最後に長い鎖があるザンゲ坂を下ると大日杉小屋はもうまもなくである。


8:50 大日杉(610m)
帰路、昨年4月にオープンしたフォレスト「いいで」(300円)にて汗を流す。近くの資料館では「中津川、山菜祭り」が行われていて大勢の観光客で溢れていた。


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