◇9:50 七ツ釜避難小屋(1560m)
小屋はほとんど雪に埋まっていて屋根だけを出していた。
ここはちょうど山頂までの中間地点のようだった。
若い人達が何人も休憩している。ほとんど山スキーをザックにくくりつけている。
この小屋直前も急斜面だったが、見上げるとさらに斜度がきついようだった。
◇11:20-12:20 七高山山頂(2230m)
鳥海山は全体的に見た目以上に勾配があるのだが、とくに山頂直下の急斜面は特筆ものだ。シールの摩擦力を最大に働かせて直登をしばらく続けたが終点近くでは耐えきれずに斜めに登った。山スキーでここまで耐えてきた人もほとんどスキーをはずし、ザックにくくりつけたていた。今までの疲労も重なり、きつくて思わずあえぎ声がでてくるほどだった。2〜3歩登っては立ち止まり、また次の一歩を踏み出す。最後の方はその繰り返しだった。ふと気付くと風がパタリと止んでいる。汗が止めどなく流れた。日焼け止めクリームなどはとっくに流れ落ちたようだった。
やっとの思いで到着した山頂は大勢の登山者で賑わっていた。キャンプ場からだと標高差は1100m。祓川山荘からでも1000mはあるのだ。
皆、この鳥海山の長くつらい登りを耐えた開放感に浸っているようだった。七高山からは新山がすぐ目の前だ。一昨日の降雪のおかげで山肌は新雪で白く輝いており青い空とのコントラストがまぶしかった。その新山へは50mほど下り、また同じぐらい登り返す。新山はここより6m標高が高いのだ。スキーやザックを置いて何人か新山に向かうために急斜面を下っていった。外輪山の背後には真っ白い月山が青空に浮かんでいた。登りではほとんど無風だったが、山頂では適度にそよ風が吹いていて、汗をかいて火照った体に心地よかった。
山頂で1時間ほどのんびりと休憩してから大滑降を開始する。大斜面を下るのはそれだけで爽快だった。自分の足で稼いだ標高である。もったいなくてもったいなくて途中、何回も立ち止まっては自分のシュプールを振り返った。下山するのがもったいないような天候と景観だった。強い春の日差しにクラストした雪面も適度に融けていて滑りやすかった。これだとへたなテレマークターンも難なく決まる。春山の醍醐味である。しかし限りなく広く大きい斜面もスキーだとたちまちで、避難小屋から左手の広い谷に入って行き、祓川山荘も見えてくるとゴールも間もなくだった。
◇13:20 祓川キャンプ場の駐車場着
下山後、やはり鳥海山の登山口である猿倉口近くの湯ノ沢温泉(500円)で今日一日の疲れをとることにした。
温泉の窓からは鳥海山を真正面に眺めることができ、湯船に浸りながら今日の長かった行程を思い返していた。